【完全解説】ゼロからわかる、スタートアップの資金調達
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村上誠典(TAKA)です。
「スタートアップの成長と資本政策」
宇宙工学エンジニア→ゴールドマン・サックス→シニフィアン創業、と歩んできました。一貫して産業創出を、エンジニア、アドバイザー、経営者、投資家、という多様な立場で目指してきました。専門的になりすぎず、異なる立場&異なるフェーズで得た「学び」を実務に役立つ形で共有できればと思います。
今回、3つの問題意識から、プロピッカー新書の機会を頂戴しています。
1)スタートアップ経営において、事業戦略の重要性は多く語られるが、コインの裏表の関係にある、財務戦略、特に「資本政策」について語られること相対的に少ない
2)資本政策と資金調達を混同されているケースが多く、資本政策の明確な定義を説明できる人が少ない
3)未上場スタートアップと上場スタートアップで「分断」が生じており、本来は連続的に捉えるべき「資本政策」を未上場と上場の双方の知見から連続的に語られることが極めて少ない
4回シリーズで、毎週日曜日に掲載されます。週末のちょっとした読書として、また翌月曜日からのビジネス脳への切り替えの準備として、是非ご覧いただけると嬉しく思います。多岐にわたるテーマで正直1回では語り尽くせていませんが、4回を通じて少しでもエッセンスを掴んでいただけるように工夫しています。
最後に、「資本政策は財務の専門家に任せておけば良い」という誤解があると思います。それは本当に勿体ないことです。資本政策を含めた財務戦略を、組織戦略やテクノロジー戦略などの事業戦略と同様に武器にすることができれば、日本はもっと良くなると思います。少しでも多くの人に「資本政策」の重要性を理解いただくことで、日本のエコシステム全体が活性化し、もっとオープンに人とサービスが繋がってくると思います。今回の寄稿を通じて、少しでも産業創出のお役に立てれば嬉しいです。網羅性高いこちらの記事を読まれた経営側の方に、実務の注目点をコメントするならば、
1 シリーズAでリード投資(主導して投資して役員派遣等する投資家)してくれた投資家に、シリーズB、Cでも継続投資してもらうこと
2 そのためには、シリーズAで投資家に示した事業計画やプロダクトのプランを、失望されないように実現すること、言い換えれば本気で実現する算段がないプランを提示しないこと
これが非常に大事です。
1 そもそもこのシリーズABCという考え方の総本山であるアメリカではよほどの大失敗か仲たがいがない限り、シリーズAのリード投資家はそれ以降のシリーズは別の投資家がリードしつつも、自社のシェア維持する程度には継続してフォロー投資します。
この慣例は日本にもまあまあそのまま入ってきており、主力大手VCならこれを踏襲しています。
この考え方をとらないVCもおられますが、
「シリーズAリード投資家がそれ以降のラウンドで追加投資しない」ということ自体、その企業に対する重大なネガティブ・シグナリング(将来投資検討してくれる投資家)になるので注意が必要。
投資家を選ぶときに次回ラウンド以降での追加投資方針・ファンドサイズや過去実績(他社への投資ではどうしたか)を必ず聞いておくべき。
尚シード投資家はシード投資特化しているためこれにはあたりません。
2 経営側としては、シリーズCくらいまで進んで初めてわかってくることでシリーズAの時期には無我夢中で調達後の約束のことを重要だと思う余裕がないことが多いのですが、ファイナンスとそのためのプランは投資家との夢の提示であると同時に「約束」なのです。この資金でこうするんだ、のこうする、を実現しなければなりません。
よく、調達が終了したとたんに事業計画を下方修正(というか現実的な小さなプランを提示しなおす)する経営チームがいますが、本来非常によくないことであり相応の説明が必要になります。
こうしたやりとりはすべて投資家の記憶と評価に残っており、それがシリーズB以降に影響してきます。
「この経営陣は最初のプランどおりにしっかり結果を出しているから、次も安心して仲間の大手投資家を紹介出来るし、当社も追加投資出来る。」
というのが理想の状態で、かつて起業した時の苦い経験に照らしても、、その逆は極力避けるべきなのです。シニフィアン村上氏のスタートアップファイナンスの基礎講座的な寄稿。わかりやすいです。
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最近いくつかのスタートアップの経営者をお手伝いしています。企業のフェーズ毎にお伝えする内容は変わります。アドバイスの内容が大きく変わるのは、上場が現実的に可能となるタイミングです。
上場後にも持続的に成長を行いたいとする経営者に対しては、特に下記の2つをお話しします。
①社員数が100人を超えても成長可能な組織の器を作ることの重要性。そのためにコストを投じることの意義
(⇄アーリー段階では、コストを抑制したミニマムセットでの経営を概ね推奨します)
②創業者/事業パートナーの持分の集中は流動性を枯渇させ、上場後の投資家の関心を喪失するリスクがあるため、上場を見据えた資本政策を持つことの意義
(⇄アーリー段階では、希薄化を抑制し、持株の過度な分散を回避することを推奨します)
→ 上記2つ目が本稿とリンクする部分です。資本政策は上場前・後の両方の観点にて入念に準備しないと、あとあと大変です。
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ちなみに、村上さんは私のGS IBDの2期上の先輩です。2000年代中盤に私がGSにアナリスト(= 下っ端)入社したばかりのとき、いきなり超難解なコングロマリットへの投資プロジェクトにアサインされました。村上さんは同じ投資チームでアソシエイトでした。
入社したばかりの私はテクが足りず、深夜3時になっても財務モデルを繋げられずクビを覚悟していたとき、「森ィィ、ちょっと見とくわー」でモデルを引き取ってくれました。そしたら朝9時までにモデルを直してくださいました。
村上さんにはそのときから頭が一切上がりません。