2020/11/6

【無残】再開の目途立たず解体。「豪華クルーズ船」の墓場

The New York Times

世界最大手も無念の廃船

トルコ西部イズミル市の半島は、エーゲ海を望む工業地帯。入り組んだ海岸沿いのアリアガ地区では、船舶からはぎ取られた金属や什器(じゅうき)がほこりっぽい道路の脇に散らばっている。道端にはオレンジ色の救命ボートが積み上げられ、ドックで繰り広げられる衝撃の光景をさえぎっている。
ドックを見下ろすと、5隻の巨大なクルーズ船が茶色い水面に窮屈そうに並んでいる。船内では数百の作業員が工具をふるって床や壁を引きはがし、かつて数千人を乗せて世界を旅した豪華客船の内部をむき出しにしている。
新型コロナウイルスの打撃から立ち直るめどが立たないなか、クルーズ船各社は事業縮小を図り、所有船を解体業者に売却している。
「こんな光景は見たことがありません」と、トルコ船舶リサイクル業協会のカミル・オナル会長は言う。「コロナ以前は主に貨物船を解体していましたが、最近は乗る人もなく何カ月もじっと動けないでいるクルーズ船が、同じ運命をたどるようになりました」
最大手カーニバル・クルーズ・ラインが所有する3隻──インスピレーション号、イマジネーション号、昨年大改装したばかりのファンタジー号──も解体され、リサイクルされる。カーニバルは6-8月期に29億ドルの赤字を報告し、古くて非効率的な船を13隻処分すると発表していた。
解体作業が進む、イズミル市アリアガ地区のドック(Bradley Secker/The New York Times)

それでも起きる集団感染