[香港/ロンドン 27日 ロイター] - 英金融大手のHSBCホールディングス<HSBA.L>は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な流行)を受けビジネスモデルの見直しに着手する。従来の金利収入依存から手数料収入を中心とするモデルに移行、組織のスリム化、的を絞ったコスト削減の強化を加速する。可能な状況になれば保守的な配当を再開する方針を示した。

HSBCが取り組むビジネスモデルの変更は、同行にとって極めて重大な戦略の転換となる。これまで1兆5000億ドルを超える預金を抱え、融資とで利ざやを稼いできたが、世界的な低金利環境となり、一部ではマイナスとなる中、それがままならなくなった。純金利収入は引き続き圧迫されると予想している。

HSBCは、一部市場で当座預金などの金融商品に手数料をかける可能性があると表明した。

エウェン・スティーブンソン最高財務責任者(CFO)はロイターに「一部市場で、基本的な銀行サービスで手数料の徴収を検討する必要がでてくるだろう。この環境では多くの顧客のために我々が損をすることになるからだ」と述べた。

業界の専門家は一部市場で反発が出る可能性を指摘。コンサルティング会社ピュブリシス・サピエントの金融サービス担当シニアバイスプレジデントのスディープト・ムカジー氏は「ブランドへの信頼を落としたり、顧客離れを引き起こさないよう慎重に実施する必要がある。特に同業が手数料なしでサービスを提供している国ではそうだ」と述べた。

<第3四半期は税前35%減益>

HSBCが27日に発表した第3・四半期決算は、税引き前利益が35%減少した。収入は119億ドルで前年同期から11%減少した。税引き前利益は31億ドルとなり、前年同期の48億ドルから35%減少した。ただ、同行が集計したアナリスト予想の平均の20億7000万ドルは上回った。

証券会社グッドボディのアナリスト、ジョン・クロニン氏は「減損処理の見通しは依然かなり不透明なものの、第3・四半期決算は総じて良好で、戦略見通しに関する発言も心強い印象だった」と述べた。

HSBCは、貸倒損失について、今年先に示した80億─130億ドルのレンジの下限になると予想。

「最新のガイダンスは、新型コロナウイルスや地政学上の状況を巡る不透明感に引き続きさらされているが、現在の経済見通しがさらに大幅に悪化する可能性が低いことを前提にしている」とした。

スティーブンソンCFOは投資家との電話会議で「与信に関する想定が改善する兆しがある。企業は政府の支援措置で一定の猶予を得たようだ」と述べた。

<米国中心にリストラ強化も>

収入増への選択肢が限られる中、HSBCは世界的にコスト削減に取り組んでおり、6月にはコロナ流行を受けて延期していた約3万5000人の削減計画を再開している。

スティーブンソンCFOはロイターに、今のところ追加の人員削減は計画していないが、事業モデルの転換を進めるに伴い、必要になる可能性もあると述べた。

HSBCは27日、年間費用を2022年までに310億ドル以下に圧縮するとし、2月に示した目標よりも大幅な経費削減を目指す姿勢を示した。2019年の営業費用は423億ドルだった。

また、規模の大きい米銀との競争で苦戦を強いられている米国事業について、来年2月の通年決算発表時に最新情報を公表する意向を示した。

アナリストや一部の投資家は以前からHSBCに対し、米国のリテール事業を完全に売却することを強く求めている。同行は今年、米国内の支店網を削減する方針を明らかにした。

また当局の要請で停止している配当について、2月に修正した配当方針を説明する予定。

アナリストや投資家は、HSBCが長期的に配当を減らしていくのではないかと懸念している。

スティーブンソンCFOは投資家との電話会議で「配当を再開する際は、保守的に始める見通しだ」と述べた。