[ソウル 26日 ロイター] - 韓国最大の財閥、サムスン・グループのサムスン電子<005930.KS>は25日、李健煕(イ・ゴンヒ)会長が死去したと発表した。78歳だった。2014年に急性心筋梗塞で入院、その後、療養生活を続けていた。

サムスンは声明で「李会長は、サムスンをローカル企業から世界をリードする革新企業へと変革させた」とし、「レガシーは永遠に続く」と加えた。

李会長の下で同社は、半導体、テレビ、ディスプレイなどを扱う世界的な企業に成長した。

現在、長男の李在鎔(イ・ジェヨン)氏が副会長を務めている。

サムスンは葬儀について、親族のみでしめやかに執り行われるとし、日程や場所は明らかにしなかった。

韓国大統領府によると、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は葬儀に弔花を贈る計画で、盧英敏(ノ・ヨンミン)大統領秘書室長と李昊昇(イ・ホスン)経済首席秘書官を弔問に派遣するという。

文大統領は「李会長が示したリーダーシップは、新型コロナウイルス危機下で厳しい状況に見舞われる韓国企業にとって、素晴らしい手本となり、危機や課題を克服する上で勇気を与えるだろう」述べ、遺族に哀悼の意を表した。

<再編の可能性>

李会長の死去から一夜明けた26日のソウル株式市場では、サムスン電子と系列会社の株価が上昇した。アナリストらによると、会長死去で株式売却や配当引き上げ、再編への期待感が高まっているという。

李一族の支配維持への意欲と、上場株の保有だけで10兆ウォン(約89億ドル)前後とされる相続税の支払いが、変化をもたらす可能性があると投資家はみている。ただ、どのような変化が起こるのかはアナリストの間でも意見が分かれている。

サムスンC&T<028260.KS>とサムスン生命保険<032830.KS>の株価は一時、それぞれ21.2%高、15.7%高と急伸。サムスンSDS<018260.KS>も買われ、サムスン・エンジニアリング<028050.KS>も一時上昇した。サムスン電子は小幅高で引けた。

子息の李在鎔氏はサムスンC&Tの17.3%株を保有。死去した李会長はサムスン生命保険の20.76%株を持つ筆頭株主だ。

NH投資証券のアナリスト、Kim Dong-yang氏は「相続税は大変な額になる。一族は(サムスン生命保険など)非中核企業の一部の株式を売却せざるをえないのではないか」と指摘。

KB証券のアナリスト、Jeong Dong-ik氏は「一族が相続税を支払えるよう、サムスンC&Tは増配を検討するかもしれない」とした。

大信経済研究所の企業統治の専門家、Ahn Sang-hee氏は「李会長の死去で、サムスングループは(2015年の)第一毛織とサムスンC&Tの合併以来最大の統治再編に直面している」と指摘。

「李在鎔氏にとっては李会長の保有株のほとんどを取得することがこれまでになく重要となっている。問題は税金だ。相続に関連する税金の問題や2人の妹との係争回避が主なハードルになる」と語った。

李会長の3人の子供と妻がどのように財産分与を行うのかは不明で、家族間の対立につながる可能性もある。

ソウル大学校のPark Sang-in教授は「李会長の入院から6年が経っている。したがって子供たちの間で合意されているのであれば、サムスンの継承プロセスは秩序立ったものになるだろう。そうでなければ、お家騒動に発展する可能性がある」と述べた。

サムスンは李会長の死因について詳細に言及しておらず、遺書があるのかどうかについてもコメントを控えた。

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