2020/11/14

【藤原和博】史上初、隈研吾が設計した「公立校の新講堂」

藤原 和博
元リクルート 元杉並区立和田中学校校長
公立の学校は小学校、中学校、高校合わせて3万数千校あり、それぞれに校舎が2つと体育館や講堂があるから、全国に学校の建物が10万棟立っていることになる。
そのほとんどが無味乾燥な、あのベージュ色の箱だ。それが常識だろう。
一条高校の旧講堂の外観
どうしてそういうことになるかというと、学校の設置者である自治体の首長や教育長も、建物を建てたり改修する権限を持った施設課長も、さらには現場の校長までもが思考停止しているからである。
幼稚園の園舎にはグッドデザイン賞を受賞したものもあるし、私立小学校や中高一貫校の校舎の建て替えはそのまま入試倍率に影響するから優れたデザインが多い。大学は言わずもがなだろう。
考えないで建てるか、考えて建てるか、なのだ。
公立校では権限を持つ者が情報を左から右に処理しているから無味乾燥になり、私立の場合にはデザインと機能性を編集して、何とかクリエイティブな付加価値を生み出そうという意図が見える。
今回の話は、公立校でも、ちゃんと考えて建てれば一流のデザインが可能だという実例を、奈良市立一条高校の新講堂で示した物語だ。
建築家には、国立競技場や歌舞伎座の設計をやった隈研吾を選んだが、隈さんだからといって建築費は盛っていないし、設計料も3%の公共建築物基準だ。