[ブリュッセル/パリ 13日 ロイター] - 世界貿易機関(WTO)は米政府による米航空機大手ボーイング<BA.N>への補助金を巡り、欧州連合(EU)が報復措置として米製品に40億ドルの関税を課すことを承認した。

EUの執行機関である欧州委員会は、関税措置対象とする可能性がある品目の一覧表をすでに作成。航空機のほか、ワイン、蒸留酒、スーツケース、トラクター、冷凍魚など広範な品目が含まれている。

欧州委は早くて26日のWTO会合後に報復関税措置を発動できるが、アナリストの間では米大統領選直前に発動されないとの見方が大勢。欧米の交渉担当官も、16年に及んでいる問題の解決に向け協議は可能との見解を示している。

欧州委はその後、米国と協議する意向を表明。欧州委のドムブロフスキス上級副委員長は声明で「報復措置の連鎖の回避に向け、交渉を通した解決を望んでいるとこれまでも明確に示してきた」とし、「米国がこれまでに決定した関税措置を取り下げ、それを受けEUが報復措置の実施を見送ることを提案する」とした。

米政府は昨年、EUによるエアバス<AIR.PA>への補助金に対する報復関税がWTOに承認されたのを受け、75億ドル相当の欧州製品に輸入関税を発動。双方を合わせると、企業を巡る通商問題としては世界最大級となる。

ボーイングは、同社がWTOの裁定に従っており、EUが報復関税を課す根拠はないと指摘。エアバスは双方が合意できる解決策を求めた。

米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表はWTOの決定について、ボーイングへの研究開発補助金に対する報復をEUに認めたものではなく、ワシントン州による税制優遇措置に焦点を当てたものだが、同州は今年初めに税優遇を廃止したため報復関税の根拠がないと指摘。「WTOの原則に反し、米国は対抗措置を余儀なくされる」と述べた。

ロイターは9月30日、関係筋の話として、WTOがEUの報復措置を承認したと報道。WTOの決定は新型コロナウイルス感染拡大を受け遅延していた。

*内容を追加しました。