[ロンドン 9日 ロイター] - 英国立統計局(ONS)によると、8月の国内総生産(GDP)は前月比2.1%増加し、伸び率は4カ月連続でプラスとなったものの、新型コロナウイルス危機からの回復局面では最も低い水準となったほか、ロイターがまとめたエコノミスト予想(4.6%)を大きく下回った。

8月のプラス成長に大きく寄与したのは政府の飲食店支援制度「Eat Out to Help Out」だ。ONSによると、成長の半分以上を占めたのは宿泊・食事部門で、同部門の生産は同制度とロックダウン(都市封鎖)制限の緩和により71.4%拡大した。

英商工会議所のエコノミクス部門責任者、スレン・シル氏は「経済活動が8月も回復していることが確認されたものの、成長率の急速な鈍化は、生産が依然として危機前の水準を大きく下回る中、回復が勢いを失っている可能性を示している」と指摘。「8月のプラス成長は持続的なV字型回復を示すものというよりはむしろ、『Eat Out to Help Out』などの政府の景気刺激策や経済再開による一時的な押し上げ効果を広く反映したものだ」と述べた。

感染拡大で9月に新たな制限措置が導入されたため、接待業は再び困難な状況に陥ったと業界団体は懸念を表明した。

スナク財務相はきょうの指標について「4カ月連続のプラスとなったが、多くの人が冬にどうなるか懸念している。コロナ危機を通じてできるだけ雇用確保を目指しているが、これは変わらない」と述べた。同相はきょう、新たな雇用対策を公表する。

UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのエコノミスト、ディーン・ターナー氏は、最近の調査は9月の景気鈍化を示しており、制限措置で悪化した可能性があると指摘。「イングランド銀行(中銀)に11月の会合での量的緩和拡大を促す公算が大きい」との見方を示した。

8月GDP統計公表後にポンドは対ドルと対ユーロで軟化した。

ONSによると、英国経済は依然として新型コロナ流行直前の水準から9.2%縮小したままだという。

ONSの副国家統計官(経済統計担当)、ジョナサン・アソ―氏は「経済は8月も回復を続けたが、最近数カ月よりも小幅となった」と述べた。

経済に占める割合が大きいサービス部門は7月と比べて2.4%成長した。予想(5.0%成長)を大きく下回った。

製造部門と建設部門の成長率も予想に届かなかった。

エコノミストはこれまでに、新型コロナ感染者数が9月に増え始め、政府が集会に対する制限を引き締める中、向こう数カ月は英国経済が成長面で苦境に陥る可能性があると警告している。

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