【ROLAND×田中修治】チャンスは準備している人にしか訪れない

2020/11/7
⼈・商品・場所という総合的価値が求められるリアルビジネスは、今まさに難局に差し掛かっている。しかし、今回の危機的状況は、旧態依然としたビジネスモデルを変化させるチャンスとも言える。コロナの終焉を指を咥えて待つのか、新しい形を目指し今から変わるのか。

世界を舞台に戦うオンデーズ田中修治、ホストクラブのみならず様々な業種業態で成功を続けるROLAND。異なる業界に携わる2人のイノベーターにリアルビジネス全体の今後の展望を聞いた。(聞き手:佐々木紀彦)

非常事態こそ適切に問題を切り分ける

──ローランドさん、NewsPicksはご存知ですか?
ローランド もちろんです。ただ、自分が呼ばれるとは考えていなかったので驚いています。
──早速ですが、かなり早い段階でホストクラブは一回閉じると決断しましたね。
ローランド 不当に風当たりが強いと感じる点もありましたが、感染の温床になっている部分はありましたので、顧客とスタッフの安全を守ることを最優先しました。
この状況で店を大々的に開けるのは従業員だけでなく、僕に「息子をよろしくお願いします」と言ってくれた従業員の親御さんにとっても良くないと思いました。ポジティブに考えれば閉める事でコンプライアンスを徹底していると認知してもらえますしね。
田中 落ち着いたらまた再開するんですか?お店の方々についてはどう対応したのですか?
ローランド もちろん再開します。色々な業種に携わっていますが、最も情熱を注げて、生きている実感を持てる仕事が僕にとってはホストです。だから、従業員に関しても解雇しなくて済むよう関連会社に割り振りました。
田中 リモートキャバクラが一時期流行りましたが、あれはどう考えているのですか?
ローランド 儲かりますとプレゼンして頂く機会もあったのですが、僕はデジタルよりクラシックなFace To Faceを大事にしたいので、あえて参戦しませんでした。利益以上に楽しみややりがいを大事にしたいのです。
──田中さんはコロナにはどう対応したのですか?
田中 色々な判断があったと思いますが、僕もまずは社員の生活を保証することを考えました。
社内では人件費を削減するという案も出ました。
しかし、このタイミングでもアルバイトさんにまで給料を満額払ったという事実が大切です。結果的に会社の評判にも繋がり、営業再開時に良い人材を集められる理由にもなります。
──長い目で見た時のメリットも視野に入れたということですね。
田中 あとは経験値が活きました。20年経営している間にリーマンショックや東日本大震災も経験しました。
多くの人を雇用している会社は、非常事態が起きた時に「雇用の確保」と「売上・利益の確保」の両方を同時に着手しがちです。しかし適切に問題を分けて、まずはこれ、次はこれ、と整理して考えなければなりません。
今回はまず3ヶ月から半年間は給料が保証できるようにお金を用意して皆を安心させて、その後に頭を切り替えて戦い方を考えました。だから焦って悪い手を打たずに済みました。的確に乗り切れたと自画自賛しています(笑)。

変化と普遍

──OWNDAYSは既に業績も回復しているそうですね。
田中 7月からは販売が好調です。要因はいくつかあるのですが、まず1つは消費が先細るタイミングはコンタクトから眼鏡に切り替える方が増えるという点です。今だと在宅ワークの影響もあり、更に需要が伸びています。
もう1つは投資してきたDXが功を奏しました。
眼鏡の視力測定を全て東京のセンターからリモートで行う仕組みを昨年から作っており、それを導入したタイミングでコロナが来ました。接触しなくて済むリモート視力測定は、お客様・従業員双方に非常に喜ばれました。また、コロナが始まってから突貫で来店予約システムも構築しました。
それまで眼鏡屋は土日混むことが繁盛の印でした。
しかし今はDXの導入でお客様はいつでも買いやすく、従業員は人海戦術では無い形でお客様に対応できるようになりました。DXとコロナの相乗効果で数字が伸びたのです。
今は、生産性が低いと言われてきた日本の小売業が変わる最大のチャンスだと思います。
──ローランドさんはコロナをきっかけに何か変わったと感じますか?
ローランド 変化もありましたが、僕は改めて人と人との直接的な関わりの普遍性を感じました。
一時期はホストや夜の街は要らなくなるのでは?と考えましたが、やはりなくならないと思います。むしろ人は無いものねだりなので、今まで当然だったものが無くなることで逆に価値が高まります。だから何かが大きく変わったというよりは、本質的な部分が浮き彫りになったと感じています。
田中 確かに夜の街・盛り場って絶対に無くなりませんね。世界中で大昔から行われている訳で、これはもう人間の根源的な欲望や本能に近い。お祭りやコンサートもVRになるのでは、という話もありますがそうなるとは思えません。
ローランド ホストもAIには務まらないと僕は思っています。そんなに甘くねーぞ、と(笑)!

個人のブランディングか、スケールか

──これからのリアルビジネスはどうなりますか?
田中 今後物凄く二極化していくと考えています。1つはローランドさんが体現されているように「この人から買おう」と思われる、エッジの立った個人で勝負するスタイル。
もう1つは圧倒的な規模のメリットで勝負するパターンです。グローバルな戦いでは今までの日本の大企業の定義では対抗できません。眼鏡も同じで、今までは100億円、200億円の売上高で大企業でした。
しかし、これからは1000億円、2000億円でないと太刀打ちできません。超大企業になり巨大なインフラやバイイング・パワーやネットワークでサービスを提供しなければ勝てませんよ。
──中間の規模の企業が厳しくなりますね。
田中 まさに50〜100店舗くらいで、特に際立った何かがある訳でもない、スケールメリットもたいしたことがない、このゾーンが淘汰されていきます。僕はもう個人を売っていく方向に戻れませんので、望む・望まないは関係なく1000億円、2000億円までスケールするのみです。
──ローランドさんはこれからビジネス始める人たちにはすごく良いお手本ですね。
田中 そうです。個人が際立つノウハウをローランドさんから学んだ人がYouTubeで100万200万というアクセスを稼ぐ。TV やNetflixなどは巨大な資本力を活かして個人では創れないものに力を注いで数字を取る。あらゆる分野でこの二極化は進んでいきます。コロナがその流れを加速させました。
ローランド 自分で言うのも恥ずかしいですが、確かに夢を感じてもらえる存在だと思います。ずっとサッカーをやってきて歌舞伎町に飛び込んだので、最終学歴は保育園中退みたいなレベルです(笑)。でも、こうして会社経営に携わっている姿を多くの人に見てもらえる。
僕は勉強ができないことや経営の知識が無い所に、ある種のコンプレックスを持っています。ホストから違うステップに進んだ憧れる先輩もいない。だったらもう自分が後輩に良い未来を見せないといけない。だから起業したかったのです。
──その気持ちが今の原動力になっている訳ですね。
ローランド でも、本当にまだ勉強することだらけです。ただ、色々な方に相談していく中で、発信力があるということは経営の知識以上の武器だと教えてもらいました。
商品を知ってもらうために皆が広告に大金を費やしていますが、発信力があれば抑えられます。それを理解した時、自分にもできることがある、全部自分がやる必要は無い、得意な人に任せれば良い、と気付きました。
自己顕示欲が強くて、カッコ良く・可愛く見られたい、目立ちたい、そう強く思っている人が今は沢山います。その人達のモデルケースになって、知識が無くても目立つ才能だけで未来が創れると証明したいです。
SNSやYouTubeを通して面白いことをやれば、自分1人の力でいきなり物凄い起業家になれる可能性があります。昔であれば絶対にありえません。どこに住んでいても突然次の日に世界で知られる存在になることもできる。本当に夢のある時代だと思いますね。
田中 アメリカのセレブリティが自分の知名度を活かしてビジネスをやったりしていますよね。日本でも最初にエントリーする業種の垣根を越えてスポーツ選手や芸能人が個人で発信し活躍している。面白いですよね。
ローランド だからこそ、劣等感に呑みこなれないで欲しいですよね。学歴も才能、目立つ力も才能。そういう意味では自分がバカだと思う人こそ発信力を使って起業してみろと伝えたい(笑)。後はやりながら覚えればなんとかなります。

出演者側の目線でTVを見る

田中 ある時から物凄くメディアに露出しましたよね?何か戦略や計画はあったのですか?
ローランド 時代が追いついたかな、と…(笑)。でも、花開くことを前提に準備していました。昔から、「チャンスは準備している人にしか訪れない」と言いますよね。本当にそう思います。だからTVもいつ呼ばれても良いように、視聴者というよりは出演者、楽しむというよりは研究するつもりで見ていました。
田中 TV見ながらコメント考えたり?
ローランド まさに(笑)。でも人生を変える要因は少しの素敵な勘違いからですよね?そういう意味で言うと、勘違いする才能はあったのかも知れません。
田中 露出が増えたきっかけは何ですか?
ローランド ある番組で取り上げて頂いたことです。以前のホストのきらびやかなテンプレートが嫌で、お客様へのホスピタリティーや真心を取り上げて欲しかった。だから適切に扱ってくれるのであれば出演しますと伝えました。先方にはそれで面白くできるのであれば、と言われ…、できるに決まってるじゃねーか、こっちが何年準備してると思っているんだ、と(笑)。
──ちなみにローランドさんはホスト以外にも脱毛サロンなど幅広く手掛けていますがそちらの業績はどうですか?
ローランド コロナ後の世界を楽しむというニーズがあるのか、あまり落ち込みは感じていないですね。
田中 やはりブランドが立っているからじゃないですかね?YouTubeはどうなってるのですか?
ローランド テレビ制作会社から話があり2月から始めました。素のままを出すというテーマなので、カッコよく撮ってもらえるよう口を出したいのですが、僕は全く携われなくて。直接的にビジネスのPRも一切できないので、だからこそ純度の高いローランドが伝えられていると思います。
※次回に続きます
【ROLAND×田中修治】男に生まれた以上、地球の1個や2個は幸せにしたい
(構成:菊谷 邦紘、写真:小野順平)

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今回は、NewsPicks School開校特別企画として、ROLANDさんと田中修治さんによる特別対談をお届け。テーマは「リアルビジネスの見通しと展望」。労働集約型の店舗ビジネスは利益と雇用、どちらも維持することが求められる。リアルでの接客の重要性を語りつつも、デジタルへの移行をどのように推進するのか。コロナ禍という緊急事態の中、二人の経営者が下した決断に迫る。

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新番組のお知らせ

ホスト界の帝王であり起業家のROLANDが初のレギュラー番組MCに挑戦!3人のカリスマ経営者たちと共に未来の起業家たちの熱きプレゼンに対し人生のヒントとなる“金言“を贈ります。

【経営者】 高岡浩三(WEIN挑戦者ファンド 代表パートナー) 岡島悦子(プロノバ 代表取締役社長) 佐々木紀彦(NewsPicks Studios CEO)

【起業家】 阿部吉倫(Ubie, Inc. Co-founder 代表取締役 医師) 宮下尚之 (ワンキャリア代表) 恩地佑亜(ONPA JAPAN 代表取締役) 前田瑤介(WOTA CEO)

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