【保存版】オンライン商談を成功に導く「基本の5箇条」

2020/10/5
コロナ禍で多くの企業がテレワークの導入に踏み切り、商談や会議のオンライン化が急速に進んだ。客先訪問を前提とするフィールドセールスも「初めまして」の顔合わせがWeb会議システム上であることは、もはや珍しくない。

「ネットを介した営業活動に馴染めず、苦手意識を持つセールス担当者も増えています」

そう語るのは、累計2500社以上のオンラインセールス部隊の構築支援に携わってきたベルフェイスの取締役の西山直樹氏だ。そこで今回は西山氏に、オンライン商談のよくある疑問とヒントを聞いた。

オンラインセールス普及の要因は、コロナ禍だけではない

西山 これまでオンラインセールスは、企業が業務効率化や働き方改革の一環として導入するケースが主。
 ユーザーは、ソフトウェア活用に馴染みのあるIT業界、またHRテックが盛り上がりを見せる人材業界などが中心でした。
西山 大きな変化が表れたのは、やはり新型コロナの感染拡大です。
 全国の経営層と営業職を対象に行った調査では、約半数が「オンライン商談を導入している」と答え、そのうちコロナ禍を機に導入したのが48.5%、本格的に活用し始めたのが28.1%という結果になりました。
西山 今までオンラインでの商談やカスタマー対応に無関心だったり消極的だったりした業界、例えば製造業や不動産、金融などからの引き合いも増えています。
 ニーズの広がりを後押ししているのは、もちろん先行き不透明なコロナ禍です。しかし個人的には、営業職の人材不足も影響していると考えています。
 総務省の調査によると、2000年には968万人いたはずの営業職は、この20年ほどで100万人ほど減少しているのです。
西山 この原因を“団塊の世代”の大量退職に求めることは間違いではありません。
 しかし、一貫して営業支援を手掛け、ここ5年で約1200社のオンラインセールス部隊構築に携わった私の肌感覚では、それだけが原因とは思えません。
 以前は“企業の花形”ともいわれた営業ですが、若い世代の目には“足で稼ぐセールス”が非合理的かつ時代遅れな存在として映り、不人気な職種になっているのではないか、と。
西山 コロナ禍の対策として突如広がったかに見えるオンラインセールスですが、実は時代の流れとともに普及の土壌は整いつつあった。私自身はそう捉えています。

“オンライン商談あるある”な5つの疑問

 西山氏によると、オンライン商談を始めたものの、うまく活用できないケースが散見されるという。
 ここでは、オンラインセールスの現場を最前線で見てきた西山氏とともに、オンライン商談に関するよくある5つの疑問を見ていこう。
西山 コロナ禍においては「自社がリモートワークだからオンラインがいい」「感染リスクがあるなか、自宅やオフィスに人を招き入れたくない」「オフィス家賃がもったいない」という方は確実に増えています。
 不動産や金融商品は高額商品の代表格。お客様に丁寧な接客をしたいという気持ちは大変よくわかりますが、この状況下で訪問営業にこだわるのは、むしろ非常識とさえ思われかねません。お客様の気持ちを汲み、柔軟な対応を取るべきです。
 もしオンライン対応のほうがベースになれば、契約調印や商材の引き渡し、トップとの対面といった「ここぞ」という場面で、直接会うことが付加価値になります。メリット・デメリットをきちんと見極め、手段を使い分けましょう。
西山 オンライン上での会話は、ジェスチャーやアイコンタクトといった非言語のコミュニケーションが削ぎ落とされます。リアルとの勝手の違いは、すでに多くの方が体感しているでしょう。
 それにもかかわらず、訪問営業時に使っていた資料や営業トークの台本であるトークスクリプトを、オンライン商談でもそのまま使うケースが見受けられます。同じやり方が有効とは限りません。
 改良のポイントは「いかに商談相手をプレゼンに集中させ、飽きさせないか」。特に次の3点を意識して作るのがオススメです。
西山 長時間にわたる一方的な質問、読めばわかる内容の読み上げばかりでは、画面の向こうでこっそりメールを返信したり、別の仕事を始めたりされてもおかしくありません。
 訪問営業からオンライン営業へのシフトで節約できた移動時間を、ぜひ資料のアップデートにあててください。
西山 社内のセキュリティ規定によってソフトウェアのインストールが制限されている企業は少なくありません。
 業界や商談相手によっては、ITの利用経験が乏しく、新たなツールに二の足を踏まれる方がいらっしゃるのも事実です。
西山 まずは訪問営業と同じく「今度ぜひご説明させてください」とアポを取り付けましょう。これだけで、断られる可能性はグッと下がるはず。
 もし「弊社のオンライン商談システムで〜」なんて丁寧に手段を説明すると、かえって面倒くさそうという印象を与えかねません
 とはいえ、お客様のPCスペックや通信環境によっては、せっかく繋いでもらったのに、映像や音声が頻繁に途切れてしまうことも。
 オンライン商談をスムーズに進めるには、商談相手の心理的ハードルを下げるだけでなく、インストール不要なシステムを選ぶなど、できるだけ相手の手間を省く工夫も必要です。
西山 Web会議システムの画面共有機能を使って、プレゼン資料を表示しながら商談することは多いですよね。とても便利な機能ですが、操作を誤れば、競合に関連する資料や個人情報が流出しかねません。
 ちなみに、金融業界などのセキュリティに厳しい企業では、資料はすべて事前送付。画面共有する場合は、お客様にお願いして資料をめくってもらう、というやり方でリスク管理を徹底しているところさえあります。
 リアルタイム共有でない分、手間は増えてしまいますが、リスクを最小限に抑えるならば、資料はメールなどで事前に送り、各自で見てもらうようにしましょう。
 より安心なのは、商談前に資料をセットしておけたり、資料共有の承認機能があったりする商談専用のシステムを使うこと。操作性を保ちつつ、不用意な情報流出のリスクを最小限に抑えることが可能です。
西山 無料のWeb会議システムでも事足りるという考えは理解できます。当社でも、無料ツールを社内外のウェビナーやイベント配信で利用していますからね。
 ただ、オンライン商談のデータは“会社の資産”であると、私は考えています。みなさんはその資産を蓄積し、活用できているでしょうか?
 今この瞬間も行われているであろうオンライン商談をたれ流すのは、企業にとって大きな損失。せっかくの資産を活用せずにいるのは、あまりにもったいないんです。
西山 トップセールスがどのようなお客様に対し、どのような間合いで、どんな話をしたのか。ブラックボックス化しがちな商談の中身を、データとして蓄積するメリットは計り知れません
 そして、コロナ禍で新人研修の基本中の基本だったOJTが難しくなり、若手の教育に悩む声もよく耳にします。
 しかしオンライン商談システムなら、わざわざ同席しなくても、新人は先輩たちの商談のハイライトだけを観て、自主的かつ効率的に学ぶことができるのです。
 営業の人材育成としては、こんなチャンスはありません。もしかすると、ベテラン営業がオンライン商談への順応であくせくしているうちに、デジタルネイティブの新人が爆速で勝ちパターンを身につけ、次世代のトップセールスになってしまう。そんな展開もあり得そうです。
 つまり、オンライン商談システムの真価は、商談データの活用に始まる、日々の営業活動とマネジメント・育成という二つの効率化。無料のWeb会議ツールと重なる機能はあれど、似て非なるものなのです。

オンライン商談の「基本の5箇条」とカギを握るツールとは

 西山氏のヒントをまとめたオンライン商談の「基本の5箇条」は次の通り。
 5箇条の最後に語られたのは、オンライン化したからこそ可能になった商談データの活用。
 そのカギを握るオンライン商談システムが、ベルフェイスだ。
 最後に、西山氏に「これからの営業の極意とは何か」を尋ねると、こんな答えが返ってきた。
西山 オンライン商談の普及は、不合理だらけだった営業が新たな方向に進みだすチャンスだと思っています。
 なので、この状況を「コロナだから」「リモートでやらざるを得ないから」ではなく、リモートだから、オンライン商談だからこそ、対面とは異なる価値を持つ商談ができる。そんなふうに信じる姿勢が、これからカギとなるのではないでしょうか。
(構成:武田敏則 編集:中道薫 撮影:森カズシゲ デザイン:田中貴美恵)