[バクー/モスクワ/エレバン 28日 ロイター] - ナゴルノカラバフの領有権を巡るアルメニアとアゼルバイジャンの軍事衝突は、同地域からのエネルギー供給にまだ影響していないものの、衝突が激化すれば石油と天然ガスの輸出に影響が及ぶ可能性があると、アナリストが28日指摘した。

アルメニアとアゼルバイジャンは27日、長年争いの場所となってきたナゴルノカラバフで両国軍が衝突。少なくとも兵士16人と複数の民間人が死亡した。衝突が起きたのは2016年以来で、石油・天然ガスの重要輸送路に当たる南コーカサス地方の政情不安定化懸念が再燃している。

アゼルバイジャンの主な石油輸出ルートは、ジョージア(グルジア)を経由してトルコの地中海沿岸に至るバクー・トビリシ・セイハン(BTC)パイプラインで、同国の石油輸出の80%を占めている。石油供給量は日量120万バレルで、世界全体の1%以上に当たる。

現在の輸出量は日量50万バレル以上となっている。

また、アゼルバイジャンのシャーデニズ1ガス田の生産量は80億立方メートル。シャーデニズ2ガス田の生産量は年間160億立方メートルに達する見込みで、欧州向けに100億立方メートル、トルコ向けに60億立方メートルが割り当てられるという。

コンサルタント会社オイルエックスはノートで、「ナゴルノカラバフでの軍事衝突は、石油やガスを世界市場に輸送する主要パイプラインの回廊地域の安定性を脅かすため、国際社会に懸念を与えている」と指摘。

格付け会社S&Pはロイターに対し、軍事衝突は現時点で「くすぶっている」状態であり、エネルギー供給への影響は少ないとした上で、「軍事衝突が一段と激化した場合には、国家財政やエネルギーの流れ、企業の流動性に与える影響を注視する」とした。