[東京 17日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は17日、金融政策決定会合後の会見で、菅義偉首相の下で新内閣が発足したことに関連して、政府としっかり連携しながら政策運営を行っていきたいと語った。また雇用を含めて国民経済の健全な発展を目指すのは当然だと述べた。

黒田総裁は、当面の最重要課題は新型コロナへの対応だとし、企業の資金繰り支援や金融市場の安定を図り、物価目標の実現に向け努力していく姿勢を改めて示した。新型コロナ対応として行っている資金繰り支援や国債、上場株式投信(ETF)買い入れなど、3つの柱による日銀の施策は効果を発揮しているとしたうえで、内外の金融市場はなお神経質だが、ひところの緊張は緩和していると語った。

第2次安倍政権誕生後のアベノミクスは大きな成果をもたらしたと評価。菅首相が自民党総裁選出馬の際に、雇用や事業を守るために金融政策を進めると発言したことについては「日銀法自体が物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資する、と定められている」と指摘。「第一義的な目標は物価安定だが、雇用の状況を含めて国民経済の健全な発展を目指すのは当然だ」としたうえで、「企業収益あるいは雇用・賃金が増加して物価上昇率が高まる好循環を作り出し、経済の持続的成長を実現することが重要だ。そういった観点から必要に応じて追加的な緩和措置も十分検討し得る」と述べた。

そのうえで「政府と連携しつつ適切な金融政策を遂行したい。政府と日銀の役割を認識しつつ、協調して政策を進める考え方に変わりない」と語った。安倍首相在任時と同様、菅首相とも定期的に会談したいと話した。また、安倍氏が首相の座を去っても、黒田総裁は任期途中で辞めるつもりはないと強調した。

菅首相は総裁選で「地方銀行の数が多い」と発言し、再編の必要性に言及してきた。黒田総裁は、人口減少などの構造要因に加え、新型コロナで事業環境の厳しさが増す中で「地域金融機関の統合や連携も当然、選択肢の1つになる」と指摘。「収益力の向上につながるかということとともに、顧客や地域経済にプラスの影響をもたらすかという観点も見極めていく必要がある」と話した。

GOTOトラベルに加え、菅首相が看板政策に掲げる携帯電話料金の値下げが実現すれば、物価に一段と下方圧力が掛かる。ただ、黒田総裁は「すう勢的な物価に対する影響とは違う」と指摘した。

米連邦準備理事会(FRB)が新たに採用した平均インフレ目標については、物価が安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大を継続するとした日銀の「オーバーシュート型コミットメント」に触れ、FRBの考え方は「日銀のこれまでの政策運営の考え方と軌を一にしたものだ」と述べた。

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(和田崇彦)