気象学最後の謎が、巨大なビジネスチャンスに。超高精度に風を測る京大発テックベンチャーの躍進

2020/9/25
 周囲約10kmの風の動きを、簡便にスキャニングできる技術。
 そんなテクノロジー、世にいう「DeepTech」を開発できたとしたら、あなたはどんなビジネスが思い浮かぶだろうか。
 2015年に創業した京都大学発のテクノロジーベンチャー、メトロウェザーでは、「ドップラーライダー」という計測機器を超高精度に進化させ、世界を目指そうとしている。
 まず狙うのは、ドローン市場。2018年のドローン世界市場規模は、軍用需要と民生需要を合わせて約1.6兆円。2025年には世界で約2.9兆円へと達する見込みだ。
 ドローンの他にも、航空産業、風力発電、都市防災など、需要の芽がいくつもあるという。
 2018年には2.2億円の資金調達。出資したのは、リアルテックファンド、ドローンファンドなどテック系のファンドである。この資金調達時に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による助成事業にも採択されている。
 2019年に始まったNTTコミュニケーションズのオープンイノベーションプログラムでは、共創パートナーとして6社のうちの1社として採択され、ピッチでは「オーディエンス賞」と「審査員特別賞」のダブル受賞となった。
「ないなら、(自分たちで)作ればいいと言われて、センセ(助教/現共同創業者)ぶっ飛びすぎやろって(笑)」
 メトロウェザー代表、東邦昭氏に話を訊くと、そんな素朴な答えが返ってきた。
2009年に京都大学のポスドクに着任後、大気レーダーを用いた乱気流検出・予測技術の開発、高分解能気象予測シミュレーションの開発を行う。民間気象予報会社において2年間の環境アセスメントの実務経験も持つ。2014年にポスドクを辞めた後、1年間の起業準備期間を経て、2015年に古本淳一とともに京都大学発スタートアップとしてメトロウェザーを設立。代表取締役。神戸大学博士(理学)・気象予報士。
 大きな期待を背負った新進気鋭のテクノロジーベンチャーの代表は、デジタルサービスのベンチャーとはまるで違う柔和な語り口ながらしかし、研究者としての覚悟を秘めていた。
「思えば、ずっと風を測ってきた」と語る東に、テクノロジーベンチャー躍進の軌跡を聞いた。
 後半では、メトロウェザーと業務提携契約を締結し、野心的なプロジェクトの相棒を務める、NTTコミュニケーションズ株式会社の平川裕樹氏に、大企業とベンチャーの密な関係について話を聞いた。
 インターネット、スマホ、SNS、Zoom、5G……テクノロジーの進化によって、社会はどんどん繋がっていきます。人と人、人と社会との距離を超えながら、いかによりよい未来を創っていけるのかを探る大型連載「Change Distance.」。コミュニケーションの変革をリードするNTTコミュニケーションズの提供でお届けします。

風を捉えて産業に活かす。京大発ベンチャーの挑戦

──メトロウェザーの技術について、まずは教えてください。
東邦昭(以下、東) 我々のまわりに吹く「風」の可視化です。そのために、風向や風速などの風の情報を測定する「ドップラーライダー」という機器を開発しています。
──リリースには、「高精度風況観測を提供する超高分解能ドップラーライダー」とあります。ドップラーライダーという機器自体が、オリジナルということでしょうか。
 いえ、ドップラーライダー自体は存在しました。でも、従来のものは一長一短というか、僕たちが計測したい風をうまく捉えられなかったんです。
 例えば、小型のドップラーライダーは、5km以下の狭い範囲しか測定できない。一方、大型のドップラーライダーは数十km先まで観測できるけれど、貨物列車のコンテナくらいの大きさがあったんです。もともとは軍事用途や空港での運用を考えて作られたものなので。
 そこで、我々はドップラーライダーの小型化・高精度化に挑戦しました。今年の5月に完成したメトロウェザーのドップラーライダーは、1m四方と小型なのに数十km先の風向や風速も測定できます。今後は、さらに小型化した60cm四方のドップラーライダーを発表する予定です。ここまで小さくすれば、ビルの屋上や基地局などさまざまなところに設置できます。
──なぜそのようなことができたのでしょうか。
 高精度化に一役買っているのが、京大の研究室で培ってきた信号処理のノウハウです。従来のドップラーライダーでは、数km以上先の風はノイズが邪魔をして測定できませんでした。でも、メトロウェザーは独自の信号処理でノイズを取り除くことにより、10km以上先の微弱な風のシグナルも的確に捉えます。
──取得した風況データは、どういった分野で利活用できるのでしょうか。
 みなさんがイメージしやすいところでは都市防災ですね。ドップラーライダーで風を把握できれば、列車の運行を止めるような強風やゲリラ豪雨をもたらす雲の発生を予測することが可能になります。雲ができる前には必ず風が集まるんです。その風を測れたら、ゲリラ豪雨をもたらす入道雲の卵が見つけられるはずです。
 じつは、そこから社名もつけました。「メトロ」は「都市」、「ウェザー」は「気象」。都市の風況を把握し、安全を守るという意味を込めています。
──他にニーズがありそうな分野は?
 風力発電ですね。洋上風力発電所の建設場所を決めるのに、どこにどのくらいの強さの風が吹いているかを計測して割り出すことが必要なんです。あとは、航空産業。航空機の後方乱気流を検出して事故を防ぐ、という活用法もあります。
 3年ほど前からは、ドローンを飛ばすために風況を知りたいというニーズも出てきました。ドップラーライダーのデータを活用して、ビル風や突風を回避するルートを検索できればドローンの墜落を防げます。ドローン産業の分野は、今後大きな成長が見込めると考えています。

地表面に近い風は、気象学的に謎のままだった

──東さんは気象予報士の資格もお持ちですよね。そもそも大学の研究から、どのように起業に至ったのでしょうか。
 学部や院のときは、線状降水帯という集中豪雨の研究をしていたんです。博士号をとってから、2009年にポスドクとして京都大学の古本淳一先生の生存圏研究所(生存圏研究所大気圏精測診断分野)に入りました。古本とは、後にメトロウェザーを一緒に創業することになります。
 古本の研究室は、気象レーダーを用いて大気を測る研究をしていました。そこで僕は、シミュレーションで風を捉えて予測することに挑戦していたんです。
 そもそも、風って歴史的に上空から明らかになっていって、地表に近いところのほうが、よくわかっていないんですよ。
──地表に近いほうが観測しやすそうなのに。
 おもしろいですよね。歴史的に大気の流れは、上のほうから解き明かされてます。
 航空機が飛ぶ約8000〜1万2000mの風の研究は、1950〜1960年代にかなり進みました。上空は障害物がないから、1点で測ると100km、200km先もだいたい同じ風が吹いているんです。つまり広範囲の把握でも意味があります。
 一方で、地表に近い高さの風は、建造物の影響を受けるのでとにかく複雑です。1点の計測値でまわりの状況が把握できるというものではありません。測定するすべがなく、シミュレーションしても本当のところがわからないまま。人間の生活に密接している部分なのに、そこが一番気象学的には謎だったんです。
──おもしろいですね。それをなんとか明らかにしようとしていた。
 生存圏研究所では、滋賀県甲賀市に野球場1個分くらいある巨大なレーダーを設置していたんです。ここで大気を観測していました。滋賀県のJR湖西線は、「比良おろし」と呼ばれる比良山地からの強風に悩まされていて、冬場はダイヤがよく乱れていました。その風を測定できないか試みたりしていたんです。
 でもレーダーつまり、電波で風を測定するのは難しいんですよ。2014年にいよいよ研究が行き詰まってきたとき、古本が「電波はあかん。光や」と言ったんです。それで、既成のドップラーライダーを使ってみることにしました。
 ドップラーライダーの原理は、レーザー光を発射して大気中のエアロゾル(大気塵、ごく小さな浮遊粒子)からの光を受信し、その信号周波数成分を解析して、エアロゾルの移動速度、つまり風速を計測するというものです。エアロゾルがある速度で移動していると、発射したときの周波数と戻ってきたときの周波数が異なる。そのドップラー効果を利用していることから、「ドップラーライダー」という名前がついています。
──大気中には常に塵が飛んでいるんですか?
 良い質問ですね。基本的に飛んでいます。大気汚染などがなくても、目に見えないくらいの大きさの塵はある。でも、台風が去った直後だけは空気が澄んでいて、塵が少なくなります。それも、数時間したら元に戻りますよ。

「なければ作ればいい」ものづくり魂が起業につながった

──既成のドップラーライダーで、地表に近い風を測れるようになったのでしょうか。
 いえ、最初はうまくいきませんでした。外国製のドップラーライダーでテストしてみたのですが、計測できる距離が想定よりも全然短く、思うように観測できなかったんです。
 その結果を受けて、古本さんが「よし、(自分たちで)作ろう」と言い出したんです。僕は「ちょっと、センセぶっ飛びすぎやろ……」と引きましたね(笑)。
──そんなにかんたんに自作できるものなんですか?
 いや、めちゃめちゃ難しいんです(笑)。今年の5月にやっと1号機が完成したので、6年かかりましたね。
──ぶっ飛んでますね……。
 あはは。琵琶湖の湖畔で言われたときのこと、今でも忘れられません。
 僕らがいた研究室は「ないなら作ればいい」というマインドがありました。滋賀県の超巨大レーダーも、研究室の先輩方が30年ほど前に作ったという歴史がありまして。「ないなら作ればいい」マインドが受け継がれていたんですよね。最初はできるわけがないと思ったのですが、最終的にはやってみようと決心しました。
──そのドップラーライダーを開発するにあたって、起業の話が出てきたんですね。
 当時、大学の研究成果を世の中に出していくべきだという、社会の気運が盛り上がってきていたんです。大学としても、研究成果を社会実装していこうという気運が高まっていました。
 でもこの時点で僕は大学の研究員。スタートアップのことなどまったく知りませんでした。そこで、くわしそうな人にどうしたらいいか聞いてみたら、「まず、東さんが大学を辞めてCEOになることですね」という答えが返ってきました。
──急展開ですね。
 ほんまに急展開ですよ。でも、今のまま研究を続けても、成果が出なければ僕自身も行くところがなかったんです。
──と言いますと。
 じつは研究者としてこのままやっていくことに疑問を感じていました。昔は40歳くらいまでにみんな助教になって、自分の研究室を持つというキャリアプランがありましたが、今はそんなことありません。
 ポスドクという立場だと、2、3年の任期なのでその間に成果を出せないと終わり。容赦なく切られます。若手研究者が集まると、もっぱら「次どうする?」という話ばかりです。
 一方、アメリカでは研究成果をビジネスに転用し、国から予算をもらうだけでなく自分で研究費用を稼いでいる人たちがいます。日本にはそうした事例があまりないので、チャレンジしてみたいと思ったんです。
──研究の世界に行き詰まりを感じていたんですね。
「チャレンジしてあかんかったら、そのときはそのとき」と考えて、起業に踏み切りました。1年間起業準備をして、2015年に古本と一緒にメトロウェザーを立ち上げたんです。
 僕、民間の気象会社で契約社員として働いていたことがあるんです。2009年に古本の研究室に入ったものの、2年では風をレーダーで捉えられなかった。論文という成果もないので、呼び出されて「このままだと残られへん。どうする?」と進退を迫られたんです。
 そこで、とりあえず気象会社で働くけれど、非常勤として籍は残してほしいと頼みました。研究者の道は諦めたくなかったので……。
──気象会社では、どんな仕事をされたんですか。
 工場などの建設予定地の気象を調査・評価する環境アセスメントの部署に配属されて、全国を飛び回りました。何をするかというと、空き地で風船を上げまくるんです。
──風船を上げる……?
 ゴム製の気球に温度計などをつけて、気温や風向、風速の観測をするんです。2交代で24時間観測するのですが、僕はだいたい夜勤の担当でした。夜9時から朝の9時まで、3時間おきに誰もいない場所で風船を上げる。
 明け方になってくると、つらくなってくるんですよ。スーツ姿で出勤する人の姿が見えてきて、時折「自分はなにをやってるんだろう」と考え込んでしまう(笑)。
──たしかに考え込みそうです。しかし、その頃から今にいたるまで、東さんはずっと風を計測しているんですね。
 そうですね。たしかにずっと風を測ってますね。だからその実地の経験は、ビジネスのニーズとしてとても理解できたんです。こんなんバッと計れたらいいやろな、という。
──なるほど。そして研究室に戻ってから1年ほどで、起業を決意された。起業してから、ドップラーライダーの開発は順調だったのでしょうか。
 いやあ、そんなことはありません。原理はわかっていて、構成もわかっているけれど、いざ組み上げてみると思ったようにデータがとれない。その繰り返しでした。
 ドップラーライダーは、レーザー光源、光を分割する装置、光を増幅する装置、といくつかの部品の集合体なんです。それらの一番適切な組み合わせを見つけるのが難しかった。難解なパズルのようでした。
 その結果、今年の5月に6年がかりで1号機が完成して、もうすぐ10月には、さらに小型化した2号機ができます。

使われなくなった鉄塔が、風のデータ基地になる

 2019年に始まったNTTコミュニケーションズのオープンイノベーションプログラムで、メトロウェザーは「山中の無線中継所や鉄塔の新しい活用による、新たな価値創造」というテーマの共創パートナーとして採択され、「オーディエンス賞」と「審査員特別賞」のダブル受賞となった。以降、2020年にはNTTコミュニケーションズと業務提携契約を締結。スタートアップと大企業はどのように共創関係を結んだのか。
──そもそもこのプログラムはどういった経緯で応募したのでしょうか。
 とにかく、機器を試験的に設置させてもらえる場所を探してたんです。それで、「鉄塔や無線中継所を活用した新たなサービス」という募集に出会って即日、「鉄塔を活用した小型ライダーの展開による風況データ活用の実現」という内容で応募しました。
──当時、メトロウェザーからの応募内容を見て、平川さんはどう思われましたか?
NTTコミュニケーションズ平川裕樹(以下、平川) まず直感的にとてもおもしろいと思いました。
NTTコミュニケーションズ入社当初より、映像伝送サービスの企画・開発チームで新規サービス開発を担当。2017年より現職。NTTコミュニケーションズにおける基盤設備を管理する組織の企画業務において、事業計画策定のほか、オープンイノベーションプログラムを活用した新規事業開発に向けた取り組みを実施。
 たしかにこれからの世の中にはドローンが増えるだろうし、「風を制し、空の安全を守る」という公共性のあるビジョンも、NTTコミュニケーションズと親和性があると感じました。弊社に風を扱う事業はこれまでなかったのですが、ドローンが安全に飛べるよう空のインフラを整備するのは、通信ネットワークなどのインフラ整備に近いですよね。
──そもそも、なぜ「鉄塔や無線中継所を活用した新たなサービス」というテーマを設定されたのでしょうか。
平川 私がいる部署はインフラデザイン部という、建物やケーブルなど物理的な資産を管理している部署で、その資産の一つに鉄塔がありました。
 全国の都道府県の要所に鉄塔があり、以前は無線の設備などを置いていたのですが、近年は通信も地下を這う光ケーブルが主流になり、あまり使われなくなっていたんです。維持にもコストがかかるし、なんとかビジネスに活かせないかと考えて、テーマを提起しました。
NTTコミュニケーションの社屋から望む鉄塔。こちらも同社の管理資産
──協業はどのように始まったのでしょうか。
平川 まずは鉄塔を一緒に見に行くことから始めました。六甲山に鉄塔があるのでそれを見に行き、まずはここにドップラーライダーを設置して風況データを取得してみましょう、という話になったんです。でも、ドップラーライダーの開発にご苦労されていたようで……。
 昨年8月末に開催されたオープンイノベーションプログラムの中間発表には、完成が間に合わなかったんです……。
平川 完成までの間に、他にやれることはないかと考えました。そこから、NTTコミュニケーションズのネットワークやクラウドを活用して、風況データのプラットフォームを構築するというアイデアが出てきました。また、今のままだとドップラーライダーで取得したデータが解釈しづらいので、NTTコミュニケーションズの方でもっとわかりやすくビジュアライズするという話も進んでいます。
 鉄塔にこだわらなかったのが、逆に良かったのかもしれません。メトロウェザーさんからも信号処理技術の部分で新しいアイデアを出していただき、さまざまな方向性を検討することができました。
──平川さんは、そもそもインフラデザイン部として、遊休資産の活用が目的で、このプログラムのオーナーになっていたんですよね。それが今では事業提携から新規事業的な役割を担われているということですか。
平川 結果的にはそういうことになりますね。うちの上司も新規事業の可能性を理解してくれて、社内でも、いろんな部署から応援してもらって、今に至ります。

正直に意見をぶつけ合い、一つのチームになれた

──とはいえスタートアップと大企業。カルチャーのギャップなどはなかったのでしょうか。
平川 カルチャーの違いはもちろんありました。ですから、時間をかけて議論したんです。
 いつも平川さんたちは「何が一緒にできるか」とスタートアップ側に立って柔軟に考えてくれるんです。
平川 一度、お互いの意見をぶつけ合い、真剣に議論したんですよね。そのときに権利関係についてのメトロウェザーさんの思いを、ダイレクトに伝えてもらったのが良かったと思います。
 テクノロジーベンチャーの失敗のいくつかは、権利関係の問題について、うまくアライアンスを組めず、事業に制約が生まれて、先細りしてしまうというケースが多いと聞きます。
 今回だって「鉄塔のプロジェクトで応募したんだからそれをやるべき。できないなら関係は終了」と一方的に切られる可能性があった。でも、まったくそうではありませんでした。
平川 話を聞いて、権利をNTTコミュニケーションズ側が持つことで、メトロウェザーさんのビジネスが発展しないというのは本末転倒だと考えました。そこで、メトロウェザーさんの希望がなるべく叶うように、法務や財務などを含め、関係部署で調整をおこなったんです。
 あのときは内心「ここまで言ったら、関係が終わってしまうかな」とヒヤヒヤしていました。でも、言わないと表面的な付き合いで終わってしまう。それでは、この先うまくいかないと思ったんです。
平川 こちらとしては、スタートアップ側がNTTコミュニケーションズをうまく使って、どんどん成長してくれたらいいと思っているんです。将来的にメトロウェザーさんがこのオープンイノベーションプログラムをきっかけに成長して、大きなビジネスを一緒にできたらそれが一番ですよね。
──今、NTTコミュニケーションズとメトロウェザーはどんな関係だと思いますか?
平川 オープンイノベーションプログラムの共創パートナーは、委託とは違って、足りない部分を補い合っているという感じなんですよね。友達……でもないし、なんて言ったらいいんでしょう。
 こちらとしては、チームを組ませてもらっている感覚ですね。はじめはNTTコミュニケーションズさんのオフィスがあるビルに入るのも緊張していました。それくらい遠い存在だったのですが、今は同じ目標に向かって走っているチームメイトだと感じています。
 ドップラーライダーで取得するデータを、どう活用するか。その部分はメトロウェザー単独ではできないことばかりです。だからこそ、NTTコミュニケーションズさんとタッグを組んで発展性のあるビジネスにつなげていきたいんです。
──最後に今後の展望についてお聞かせください。
平川 風況データのプラットフォームは、システム環境をつくっている最中です。それができたら、実際にお客さんに提案し、一緒に検証していこうとしています。
 ドップラーライダーも、フィールドで実証実験をする段階に入っています。5年後には、NTTコミュニケーションズさんの鉄塔には必ずドップラーライダーがついていて、世間的にも、それで風のデータをとっていることが認知される世界になっていたらいいですね。
 まだ世界的にも、小型で高性能なドップラーライダーは出回っていないので、早く量産の体制を整えて海外にも進出したいと考えています。
 また、気象学の面でも最後の謎であった「屋根の少し上くらいの高さの風」の全貌が明らかになるのではないか、と期待しています。ドップラーライダーでデータが集まるようになれば、新たな発見がきっとあるでしょう。
(編集:中島洋一 構成:崎谷実穂 写真:加藤麻希 デザイン:田中貴美恵)