2020/9/18
【新】人生100年時代のカギは「人の感性に寄り添う医療」
まるで預言者のように、新しい時代のムーブメントをいち早く紹介する連載「The Prophet」。今回登場するのは、今最も注目される若手医師のひとりである武部貴則氏(横浜市立大学特別教授・東京医科歯科大学教授)だ。
人生100年ともいわれる超高齢化社会で、われわれが「よりよい人生」を獲得するには、普段の生活の中で、自然に、持続的に、自分らしい生き方が実現されていくための仕組みづくりが必要だと語る武部氏。
そのためのアプローチとして、武部氏が提唱するのが「ストリート・メディカル」という新しい考え方だ。
従来の医療の手法や場を超えて、アイデアやテクノロジーが自由にぶつかり合うことで、これまでになかった試みが次々と誕生し、医療はよりしなやかになっていく──そんなストリート・メディカルの未来を垣間見てみよう。
武部貴則(たけべ・たかのり)
1986年生まれ。横浜市立大学先端医科学研究センターコミュニケーション・デザイン・センター長/特別教授。東京医科歯科大学教授。シンシナティ小児病院オルガノイドセンター副センター長。横浜市立大学医学部卒。2013年にiPS細胞から血管構造を持つ機能的なヒト臓器を世界で初めて創り出すことに成功。2018年春、最年少で横浜市立大学教授に就任し話題を呼んだ。2019年、東京医科歯科大学から教授として招聘される。2011年から「広告医学プロジェクト」を手がけ、現在では「ストリート・メディカル」として普及に力を入れている。著書に『治療では遅すぎる。』(日本経済新聞出版)。
1986年生まれ。横浜市立大学先端医科学研究センターコミュニケーション・デザイン・センター長/特別教授。東京医科歯科大学教授。シンシナティ小児病院オルガノイドセンター副センター長。横浜市立大学医学部卒。2013年にiPS細胞から血管構造を持つ機能的なヒト臓器を世界で初めて創り出すことに成功。2018年春、最年少で横浜市立大学教授に就任し話題を呼んだ。2019年、東京医科歯科大学から教授として招聘される。2011年から「広告医学プロジェクト」を手がけ、現在では「ストリート・メディカル」として普及に力を入れている。著書に『治療では遅すぎる。』(日本経済新聞出版)。
医療の世界が「開国」する
──「ストリート・メディカル」という考え方について、改めてご解説をお願いします。
武部 ストリート・メディカルとは、私たちのビジョンである「Medicine for Humanity」、すなわち「病を診る医療から、人々を観る医療へのシフト」を実現するためのアプローチです。
「これからは、非医療関係者にも医療が開放される時代になっていく」。それが、ストリート・メディカルの考え方の最も本質的な部分だと思っています。
従来、極端に「鎖国」っぽい、閉鎖的な医療の現場があったわけですが、ここにきてちょっとした明治維新が起きているという感覚ですね。
「診療して、診断して、治療して、リハビリして……」という、これまでの医療のプロセスだけでは、今の医療やヘルスケアが抱える課題にまったく太刀打ちできません。
医療は、たった100年程度の歴史で急速に多くの病気を克服し、寿命の延長を達成してきました。一方、このために、「生かすだけの役割」から「生きるための役割」までも担う必要が生じてきたわけです。
(duncan1890/Getty Images)
しかし、どんな医療の教科書を見ても、後者の役割を追求するための体系はありません。
したがって、鎖国からの「開国」によって医療の役割を開放し、その活動領域を広げていくことは、必然であり必須であると考えています。
これにより、薬や手術だけではない医療の姿が生まれる。そういったニュアンスを「ストリート・メディカル」という言葉に込めています。
──言い方を換えると、「医療を日常生活にもっと浸透させていく」というようなことでしょうか?
そうですね。医療は、生きることになじみ、社会化されていくと思います。
これは必ずしも、「誰もが日ごろから健康に気を使うべき」みたいな押しつけをするものではありません。生き方というものは十人十色で異なったデザインであるべきだし、十人十色の自己実現の中で、医療が果たせるミッションとは何だろう?と考えるのが、ストリート・メディカルのスタンスです。
(deberarr/iStock/Getty Images)
医療と「生活」の垣根がなくなる
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