[ニューヨーク 4日 ロイター] - 米株式市場は8月にS&P総合500種が30年余りぶりの高い上昇率を記録した後、歴史的に最も不安定な9-10月期に突入した。今年は大統領選や新型コロナウイルスなどの要素も重なり、一層波乱含みの展開になる公算が増しつつある。

S&P総合500種は足元で最高値圏にあり、年初来の上昇率は7%、7月初め以降では11.5%に達する。ところが3日、投資家が高騰してきたハイテク株のまとまった売りに動いたため、一気に3.5%も下落。投資家の不安心理を示すCBOEのボラティリティー・インデックス(VIX)<.VIX>はおよそ10週間ぶりの高水準に跳ね上がった。

ファンドマネジャーやストラテジストの話では、3日の動きは今後2カ月の状況を予告している可能性がある。これから機関投資家が続々と夏休みから戻り、向こう1年の経済が抱えるマイナス要因に改めて目を向けることになるからだ。

リサーチ・アフィリエーツのパートナー、ジョナサン・トリューサード氏は「過去のパターンを振り返ると、夏場は売買高が減って情報処理のスピードも鈍くなる。今年もそれは当てはまった」と述べた上で、上半期の大相場でかなり疲れた多くの市場参加者が一息入れようとしていたが、今はまた真面目に取引を始めているとの見方を示した。

調査会社CFRAのデータで1944年以降のS&P総合500種の月間平均騰落率を見ると、9月はマイナス0.5%と1年で最も振るわず、大統領選がある年は必ず下落してきた。一番下げがきついのは自動車部品や鉄鋼、半導体といった景気循環株だ。

CFRAによると、10月はS&P総合500種と小型株で構成するラッセル2000指数のいずれも、1987年に過去最大の下げを記録。下落率はそれぞれ21.8%と30.8%だった。

投資家がまず注目するのは15-16日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)で、大統領選前最後の会合となるだけに、さらなる景気支援策が話し合われる可能性がある。

CFRAのチーフ投資ストラテジスト、サム・ストバル氏は、議会で追加経済対策を巡る与野党の協議が難航していることも、1990年代終盤のITバブル以来のバリュエーションで推移している株式市場にとって、ボラティリティーを増幅させかねないと警戒する。野党・民主党のペロシ下院議長は1日、追加対策法案について与野党には依然として「深刻な溝」があると語った。

また米国で新型コロナの死者が18万4000人超に上っていることから、新たな感染拡大懸念への不安が高まってもおかしくない。ニューヨーク市は公立学校の対面授業再開を延期し、感染対策をより徹底すると発表した。

アリアンツ・インベストメント・マネジメントのシニア投資ストラテジスト、チャーリー・リプリー氏は、アップル<AAPL.O>やアマゾン<AMZN.O>など一握りの大手IT銘柄に上昇が集中している現在の市場構造が、大統領選に関する不透明感が高まることによってより大きなリスクをもたらすと指摘する。

トランプ大統領が繰り返し批判している郵便投票が幅広く導入される今回の大統領選についてリプリー氏は「投票日以降でさえ、市場にボラティリティーを生み出すだろう」と述べ、郵便投票の開票作業の遅れによって、すぐに結果が判明しない可能性があると付け加えた。

リプリー氏は「株価は既に最高値近辺にある以上、地合い悪化にそれほど多くの材料は必要ない」と話した。

(David Randall記者)