M&Aは未経験の異業種トッププレイヤーが集う「最高峰の挑戦の場」

2020/8/28
コロナ禍で事業承継とM&Aが注目されている。そんなM&A業界のリーディングカンパニーとして知られるのが、日本M&Aセンターだ。就職先として見たときは「年収が高い」「専門性が高い」というイメージを持つ人が多い。
しかし、「中の人」たちの意見は違う。「異業種のトッププレイヤーが未経験から活躍している職場」「ハードさ、やりがいも含めて、ビジネス界のエッセンシャルワーカーだと思う」「M&A業界という新しい業界を作り上げている過程だ」と言うのだ。M&Aプレイヤーとは、どんな仕事なのか。日本M&Aセンターで働くとは、どういうことなのか。最年少で取締役になったM&Aプレイヤーの渡部恒郎氏と、社員の採用・育成を担う人材戦略部の中村健太氏に聞いた。
※エッセンシャルワーカー:社会で必要不可欠な仕事に従事する者

手抜きの許されない仕事のやりがいとは

新型コロナウイルス感染症の拡大により、インバウンド需要の消失や外出自粛などの影響を大きく受けた宿泊業や飲食業を中心に倒産件数が増えている。コロナ以前から後継者問題を抱える企業が、コロナによって事業も先行き不透明となり、やむを得ず倒産に踏み切るケースも多いようだ。
同時に注目されているのが事業承継、M&Aだ。元から廃業や事業承継・譲渡を検討していた中堅・中小企業が、そのタイミングを早めるケースが増えている。
需要の高さを示すように、日本M&Aセンターの第1四半期(4〜6月)連結決算は、営業利益48億8,700万円と、前年同期比25.4%増。コロナ禍の影響で4~5月にかけて営業活動が制限されたものの、成約件数は232件と前年同期並みを達成している。
※公表されているM&Aベースであり、未上場企業は反映されていない
出典:レコフM&Aデータを基に再編
日本M&Aセンター入社以来、15年間プレイヤーとして活躍してきた中村健太氏は、そんなM&Aの現状を最前線で見つめるM&Aプレイヤーについて、「ビジネス界のエッセンシャルワーカー」と説明する。「M&A」と「エッセンシャルワーカー」とは水と油のような印象だが、どういう意味なのか。
「M&Aとは、事業をより良い形で存続させるため、さらに拡大発展させるため、オーナー経営者から次の経営者へバトンをパスすることです。会社にとって最適な譲受先を探すのがM&Aプレイヤーの仕事。
長期間にわたり利益を出して成功企業が、未来に向けた成長と存続のために譲渡を希望するケースが全体の95%以上を占めます。
しかし、緊急時のM&Aもあります。コロナ禍で会社の状況が大きく悪化してしまったケースもありますし、オーナー個人の状況変化もあります。私も過去に入院中の余命僅かな経営者から、『会社のことを頼む』と断腸の思いで依頼されたことも。
いずれにしても、会社は経営者が人生を懸けて作り上げてきたもので、M&Aはその集大成です。
たとえば、緊急病棟で働く外科医は、家族の行事や自分の体調を理由に『手術は明日にしてくれ』とは言えないですよね。M&Aプレイヤーも同じで、経営者と同じ覚悟で事に当たらなくてはいけないし、手抜きは一切許されないハードな真剣勝負です。でも、それが面白いんですよ」
日本M&Aセンターに対して「年収が高い」というイメージを持つ人は多いが、それ相応のハードな仕事ぶりが求められるということだ。
M&Aで扱うのは、会社という経営者にとって子どものような存在だ。だからこそ、手を抜けば必ずわかるし、逆に本気になって取り組めば経営者と喜びを分かち合える。実際に働いている「中の人」たちは、仕事としての「やりがい」を一番の価値だと感じているようだ。
今年、30代にして最年少取締役になった渡部恒郎氏も中村氏と同意見だ。M&A成約の最終フェーズ=株式譲渡契約を締結する「調印式」で、幾度も涙したという。
「M&Aプレイヤーの仕事を端的に説明すると、『経営者と対峙する仕事』です。中堅・中小企業のオーナーを心からリスペクトできるということが、M&Aプレイヤーとしてのスタートライン。
会社という実態のないものの価値を、どんな商品を作っているのか、どんな人が働いているのか、経営者と真剣に対峙することによって、自分なりの視点で表現し、一番価値をわかってくれる相手に譲渡する。
この仕事の面白さや、やりがいはずっと感じていましたが、調印式って経営者の奥さんが手紙を読んだりするんですよね。そこで経営者の家庭人としての顔を知って、M&Aはこの人の社員だけでなく家族や人生にも大きな影響を与えることなのだと思ったら、自然と泣いていました。
先輩たちが『調印式で泣く』と言っていたことの意味がわかったと同時に、M&Aプレイヤーの仕事の醍醐味を再確認した瞬間でもありましたね」(渡部氏)

意外にも経験者ゼロ。M&Aプレイヤーの真実

ハードだが、やりがいもある。真剣勝負だからこそ、泣ける。そんなM&Aプレイヤーの仕事には、「専門性が高い」という印象もある。しかし、これについても「中の人」の意見は違う。
先出の中村氏は4月より、人材ファースト統括部という社員の採用・育成を担う新設部署で人材戦略部長を務めている。そこでのミッションのひとつが、「未経験からでも短期間で活躍できる環境」、「全社員が活躍できるフィールド」を整えることなのだ。
「日本M&Aセンターの社員は約600人で、その9割が中途採用です。金融や総合商社出身者もいれば、コンサル、メーカー、人材系と、ほぼ全員が異業種からの入社なので、もちろんM&Aは未経験。経験者はほぼゼロなんです。
ですから、新卒採用の社員も中途採用の社員も、入社したら一緒にM&Aコンサルタントとしての基礎知識を学びます。
中途採用では珍しく、最初の1ヶ月間は研修(※コロナ禍はオンライン)。役員やベテラン社員、そして社内の弁護士、公認会計士や税理士から、みっちりM&Aプレイヤーとしての実践知識及び法務・会計・財務・税務といった基礎知識を叩き込まれるので、知識がないせいで困ることはありません。数ヶ月後には実戦の場に立ち、1年後には一人前に育っていきます」(中村氏)
専門性の高い仕事であるのは間違いないが、学び、育つ環境が整えられているのだ。
人材戦略部は今、未経験者を一人前のM&Aプレイヤーに育てるだけでなく、一人前になった先にどんなステップがあるのか、さらにキャリアアップを目指すためにどういった能力や経験が必要なのか。成長のステップを明確化し、どのレイヤーにいても常に「その次」を目指せる環境を整備している。
なかでも人気なのが「1つ上のレイヤーの社員が、1つ下のレイヤーの社員に成功体験を共有する」取り組みだ。
新人層の中でも選抜されたメンバーに向けた「令和塾」、新人層向けの「打倒令和塾」という2つの(任意参加の)共有会があり、先日WEBで行われた際には、対象者であるM&Aプレイヤーの実に9割が視聴したという。
コロナ以前に開催された「令和塾」の様子。参加者は全員、真剣に聞き入っている。
このエピソードからは、貪欲にステップアップを目指す人物像が浮かぶ。
中村氏は、「異業種、未経験からの転職組にもうひとつ共通しているのが、前職でトップクラスの実績を残しているということ。その環境に満足せず、『さらにやりがいのある仕事を』と転職してきた人たちがほとんどです」と話してくれた。
どんな業界でも、トップをとるために激しい競争を勝ち抜くには、並々ならぬ努力を必要とされる。成長のために努力を惜しまないマインドセットができている人材が、新たな挑戦の場として選ぶのが日本M&Aセンターであり、M&Aプレイヤーという仕事なのだろう。

M&Aはビジネスの総合芸術である

では、なぜ日本M&Aセンターなのか。渡部氏は「M&Aはビジネスの総合芸術である」という三宅卓社長の言葉を引用して説明する。
「M&Aによって顧客の問題解決をするためには、ビジネスパーソンとしてのさまざまな能力や心構え、つまり経営者と同等かそれ以上のスキルが必要です。『ビジネスの総合芸術』とは、M&Aのそういった面を端的に表した言葉。
だから、M&Aプレイヤーの仕事をキャリアアップの手段にしようと軽い気持ちで入ってくると火傷する。私は、どんな人にとってもキャリアの終着点だと思っています」(渡部氏)
せっかくなので、不満も聞いてみた。すると、「顧客が中堅中小企業オーナーということもあり、当社自体にも古風な体質が残っているんですよね」と渡部氏。どういうことなのか。
「『昭和の日本』的な古い部分もあり、ちょっと時代に合っていないなと感じることも。でも、それを変えていくのが中村や私などの30代のメンバーや、これから新しく入ってくる方たちだと思っています。
日本M&Aセンターは今、人員も毎年120%増と、会社の成長に合わせて加速度的に増員しています。つまり、4〜5年で『入社数年以内の人』が大半を占めることになる。
そうなったときに新しい文化を自ら作れるよう実力をつけ、結果を出していく。そういう感覚で働ける人に来てほしいですね」(渡部氏)
日本M&Aセンターが2006年にマザーズ上場した際の時価総額は200億円。14年後の今、それは9000億円にまで成長している。今後、1兆、2兆と成長していくためには、間違いなく新しい文化を持った優秀な人材が必要だ。
一方、中村氏は人材戦略部として社内の文化を変える取り組みをしている。
「完全に実力主義で、年齢も社歴も記号でしかない。結果を残せばどんな年次でも意見が通る。これが日本M&Aセンターの美点ですが、残念ながら優秀な社員が辞めていくケースもあります。
もっと意見ややりたことを吸い上げて、全社員がのびのびと実力を発揮し、活躍できる会社にすることが私のもうひとつのミッション。
グループ会社を立ち上げたメンバーや、シンガポールやタイなどの海外拠点で責任者を担っているメンバーは、いずれも自ら手を挙げてくれた社員です。また、M&Aプレイヤーをしながら、グループ会社であるファンドの投資先企業の役員を兼務している社員など、すでに『やりたいこと』を実現した事例がどんどん生まれています。
そういう意味では、渡部は『業界再編」という新たなテーマでM&Aのフィールドを構築してきた第一人者でもあります。皆が自由な発想で、事業拡大し、社会貢献できる会社でありたい。
日本M&AセンターはM&Aによって顧客を幸せにする会社ですが、その次に幸せになるのは社員です。ぜひ『挑戦の場』として選んでほしいですね」(中村氏)
(取材・文:大高志帆 撮影:小池彩子 デザイン:堤香菜)