グーグルの「Waymo One」も再開。自動運転に感染対策などの新ニーズ

2020/8/26
このコロナ禍において世界中の自動運転サービスが開発や実証が一時ストップしていたが、ようやく回復の兆しが見えてきたようだ。
例えば、世界でもいち早くアリゾナ州のフェニックスで商用サービスを開始したアルファベット傘下の「Waymo One(ウェイモワン)」もパンデミックに際して休止を余儀なくされていた。
「Waymo One」はグーグル社が進める自動運転によるオンデマンド型交通サービスで、2018年12月からフェニックスの住民向けに商用サービスを開始している。
月間1500人以上の住民に利用され、2019年1月からの週当たりの利用は3倍に増加、わずか1年で10万回を超える配車回数を記録し、この間着実に実績を積み重ねている。
実際にローンチされる前には、実証実験としてアーリーライダープログラムが2017年4月から住民400人を対象に行われた。
1年間の実績では、利用者は通勤や通学などの毎日の移動から、病院や歯医者などへの通院、近くにある商業施設への買い物、また、映画館やレストランやバーなどへの移動動など、様々な用途で利用されてきた。
初期の実証実験における人気の目的地(図の出典:Waymo)
アーリーライダープログラムを経て、2018年12月には商用サービスに移行し、今では配車サービスのLyft(リフト)のアプリからも、この自動運転サービスを利用することができる。

完全無人の配車サービスも開始

日本では、MaaSと自動運転が融合されるイメージが分からないという意見を時々耳にする。しかし、サービスを展開しているフェニックスでは、すでに融合した新しい移動サービスがスタートしている。
従来、自動運転車といえど運転席にはセーフティドライバーが同乗していたが、昨年12月頃からは一部の車両で完全無人による配車サービスが始まっている。
無人のWaymo Oneに乗車した利用者の反応が動画でも公開されており、全く新しい移動体験への興奮や、新しい時代への期待が伝わってくる。
また、Waymo Oneの専用アプリも進化しており、よりよい乗車体験を提供すべく、サービス改善が日々進められている。
基本の操作は通常の配車サービスと同様であり、行きたい目的地を指定することで、指定した乗車位置に車両が配車されるというものだ。
この間、乗車場所や降車場所を乗客側から微修正できるように改善され、視覚障害の方向けに、アプリから車両のクラクションを鳴らすことができ、クラクションの音で車両の位置を乗客に知らせる機能も追加された。

自動運転導入を自治体が支援

アリゾナ州のチャンドラー市も自動運転の導入を自治体が支援している都市の一つだ。
自動運転の時代に先駆けて専用の乗降場を義務化する法案が議論され、駐車場の付置義務台数の削減が検討されている都市でもある。2019年11月には自動運転の配車サービス専用の乗降場も設置され、自動運転を支援する自治体としては注目すべき地域だ。
世界で初めて自動運転専用の乗降スペースがオープンしたアリゾナ州・チャンドラー市の市役所庁舎前(写真の出典:Waymo)
コロナ禍においては、フェニックスの商用サービスを今年3月に休止していたものの、感染症への対策を講じ、5月11日から徐々に運行を再開している。

実証実験がすすむドイツ

ドイツでは、小型のバスによる実証実験が各地で進められてきた。このコロナ禍において一旦休止したものの、5月から各地でサービスを再開している。
例えば、ハンブルクの欧州最大のウォーターフロント開発地区であるハーフェンシティでは、地区内の移動を支援するサービスとして自動運転バス「HEAT」を運行してきた。
2019年8月から実証運行を開始、一旦休止したものの、この夏頃から乗客を乗せた運行の準備を始めている。
このプロジェクトにはメーカー(IAV)、地元交通事業者(HOCHBAHN)、経産運輸省(BWVI)、シーメンス、IKEM、DLRが参加し、小型の電動駆動による車両はドイツ初のものだ。2021年から公道での本格運行を目指している国家プロジェクトの一つでもある。
また、ハンブルグから南東に30kmほどの小都市エルベ川沿いのラウエンブルクでも運行を一旦休止したものの、5月から乗車定員を3人に制限、乗客のマスク装着などの感染症対策を行い運行再開した。
旧市街地は狭隘道路が多く、旧市街地を周回するルートを30~40分間隔の頻度で運行する。自動運転バスは「TaBuLa」と呼ばれ、フランスのナブヤ社の車両により、走行速度は18km/h以下、車椅子も乗降でき、信号機とも無線で通信可能だ(ドイツらしく、ペットも同乗できる)。
リアルタイムでの位置情報も専用サイトで提供され、日中は朝8時~11時と14時~17時までの時間帯で運行している(2020年8月20日時点)。
この実証実験は、2018年1月から3年間という長期実証を通して、公道での走行での導入を目指す国家プロジェクトだ。
ドイツではここで紹介したプロジェクト以外にも、ブランデンブルク、ラインラントプファルツ州、バイエルン州、ノルトラインウェストファーレン州、バーデンビュルテンベルク州などで自動運転バスの実証が進められている。
2019年にはベルリンでも自動運転サービスが開始された(laranik/iStock)
Beyondコロナ時代においては、運転手の感染リスクや乗客との接触機会が低減できる自動運転サービスへの期待はますます高まっていくはずだ。
一方で様々な交通機関やモビリティサービスが行き交うような都市部での導入には、課題が多い。
欧米では長期間の公道での実証を通して、市民やドライバーなどへの社会的受容性を高めていく取り組みに積極的だ。コロナ禍においても感染対策を徹底し、速やかに運行再開を始める姿勢は注目に値するだろう。