[デトロイト 12日 ロイター] - 11月の米大統領選に向けて野党民主党の候補指名が確定したジョー・バイデン前副大統領は11日、黒人女性のカマラ・ハリス上院議員を副大統領候補に起用すると明らかにした。

これについて、黒人団体からはバイデン氏の決断を評価する声が出ているが、その一方で、ハリス氏の起用で必ずしも黒人有権者の支持を得られるわけではないとの指摘も出ている。

バイデン陣営の副大統領候補を巡っては、人種差別問題への抗議デモが国内で広がる中、非白人の女性を起用するよう圧力が高まっていた。

黒人の有権者、特に女性の黒人有権者は、民主党を支持する傾向が強い。

黒人女性の政界進出を支援する「シー・ザ・ピープル」の創設者エイミー・アリソン氏は「(バイデン氏は)何百万人もの声に応えてくれた。あなた方を見ている、あなた方の声を聞いている、という党の土台に対する重要なメッセージだ」と今回の決定を評価した。

他の複数の黒人指導者も、ハリス氏には多様な人種の有権者から支持を集めた実績があり、バイデン氏の勝利に貢献すると予想。黒人有権者の投票率だけでなく、ミシガン州やウィスコンシン州といった激戦州で郊外の白人女性の投票率を上げる効果も期待できると指摘している。

黒人の民主党議員を支持する政治団体「ブラックPAC」のエグゼクティブ・ディレクター、エイドリアンヌ・シュロップシャー氏は「今回の発表が旋風を巻き起こす」と期待感を示した。

ただ、シュロップシャー氏は、ハリス氏の指名だけでは不十分だとも指摘。一部の州で近く期日前投票が始まるため、バイデン陣営は様々な地域で選挙運動をさらに加速する必要があると述べた。

<残された課題>

黒人の活動家・有権者の間では、民主党が大統領選で勝利する上で最も重要になるのは、副大統領候補ではなく、バイデン氏自身の政策だとの見方が多い。

リベラル派の民主党支持者の間では、刑事司法などを巡る問題で、バイデン、ハリス両氏の姿勢を批判する声も出ている。

ハリス氏がカリフォルニア州司法長官時代に警察の不正を取り締まることができなかったとの批判や、白人警官による黒人男性暴行死事件を受けて広がった「警察の予算打ち切り」を求める動きにバイデン氏が強く反対したといった批判だ。

「デモクラシー・フォー・アメリカ」の最高経営責任者(CEO)を務める黒人女性イベット・シンプソン氏は「(バイデン氏は)自分が貢献したいと言っている地域社会から、あまりにもかけ離れており、本当の課題に取り組む大胆さと意欲に欠けている」と批判する。

ミシガン州の民主党黒人幹部会のキース・ウィリアム会長は「残された課題がある。今の栄光に満足しているわけにはいかない」と述べた。