2020/8/7

【新】時計が売れない時代に「腕時計ブーム」を起こした男

NewsPicks, Inc. 公式アカウント
まるで預言者のように、新しい時代のムーブメントをいち早く紹介する連載「The Prophet」。今回登場するのは、「80年ぶりの日本製量産腕時計メーカー」として2014年に誕生し、時ならぬ腕時計ブームを巻き起こした「Knot」の遠藤弘満社長だ。
実際、Knotの登場は「事件」だった。
ユニクロや眼鏡のJINSでおなじみのSPA(製造小売り)方式を時計業界に持ち込み、高品質なメイド・イン・ジャパンの腕時計を1万5000円~というリーズナブルな価格で提供。
時計本体とベルトを自由に組み合わせて、約2万通り(2020年現在)ものスタイルを楽しめるカスタムオーダー方式も、「オンリーワン」を求める消費者の心をわしづかみにした。
東京・吉祥寺の、わずか26平方メートルの店舗からスタートしたKnotは、SNSなどの口コミであっという間にファンを増やし、いまや年商20億円に迫る勢いだ。
仕掛け人である遠藤氏は、海外ブランド時計のバイヤーとして、これまでにも数々のブームを巻き起こしてきた「伝説の男」。木村拓哉がドラマで着用してブレイクした「ルミノックス」や、北欧ウォッチブームの火付け役となった「スカーゲン」を、いち早く日本に紹介してヒットさせたことで知られる。
しかし、ブランドの権利などをめぐるトラブルに嫌気がさし、「日本で自分のブランドをつくろう」と一念発起。だが、その行く手にはいくつもの「障害」が待ちかまえていた……。
そんなKnotの軌跡を追った迫真のノンフィクションが、『つなぐ時計 吉祥寺に生まれたメーカー Knotの軌跡』(金田信一郎著/新潮社)だ。同書の刊行に寄せて、本紙では遠藤氏本人にインタビュー。「不可能を可能にする」モノづくりのアイデアと熱意の源泉に迫った。
遠藤弘満(えんどう・ひろみつ)
1974年、東京都生まれ。通信販売会社のバイヤーを経て、2003年に輸入商社を設立。05年にデンマークの時計ブランド「スカーゲン」の日本総代理店に。12年に「スカーゲン」の輸入販売権を失い、社長を辞任。クラウドファンディングにより資金を得て、14年に「Knot」を設立。15年、東京・吉祥寺に1号店を開店。https://knot-designs.com

誰もが「無理だ」と口を揃えた

──Knotは、日本で実に「80年ぶり」に登場した量産腕時計メーカーということで、創業にはたいへんな苦労があったと聞いています。「2015年の日本」で、腕時計メーカーをゼロから立ち上げることが、どれほど無謀なチャレンジだったのか、当時の状況を振り返ってもらえますか?