[東京 20日 ロイター] - 日銀が20日に公表した6月15―16日の金融政策決定会合の議事要旨によると、委員は、3月以降、新型コロナウイルスの感染拡大で経済活動が急速に収縮する中で打ち出した一連の政策対応が「所期の効果を発揮している」との認識を共有した。また、当面は丁寧かつ慎重に一連の政策の効果を点検していくことが重要との認識を多くの委員が共有した。

日銀は6月の決定会合で大規模な金融緩和の現状維持を賛成多数で決定。20年度第2次補正予算の成立を受け、資金繰り支援の特別プログラムの総枠は110兆円に拡大した。

何人かの委員は「企業等の資金繰りには依然ストレスがかかっているが、間接・直接金融双方で緩和的な資金調達環境が維持されており、企業は必要な資金を低利で確保できている」と指摘した。金融市場について「株式のボラティリティーはなお高めであるなど神経質な動きも残ってはいるが、全体としてはひところに比べ安定を取り戻してきている」と何人かの委員が述べた。

その上で、引き続き、資金繰り支援・円やドルの潤沢な供給・上場株式投信(ETF)などの積極購入の3つの柱により、企業の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努める方針を委員が共有。1人の委員は、新型コロナへの日銀の政策対応は「おおむね出そろった」と述べた。

委員は、当面は感染症の影響を注視し、必要があれば躊躇(ちゅうちょ)なく追加緩和に踏み切るとの認識で一致した。ある委員は、予想物価上昇率が2%にアンカーされていない下でデフレに陥ることは、「物価安定目標の実現に向けて重大な障害になり得る」と指摘。追加緩和が現時点で必要だと主張した。

<コロナ長期化なら「ソルベンシー問題に」>

6月の決定会合では、新型コロナの影響が長期化した場合に生じるリスクについても議論が展開された。何人かの委員が「感染症の影響が長期化すると見込まれる下で、今後は流動性の問題からソルベンシー(財務健全性)の問題に移行する可能性がある」と指摘。この点に関して複数の委員が、政府が信用保証や資本性資金の供給といった制度を拡充していることを踏まえ、「中央銀行の基本的機能は流動性供給だ。(政府・日銀は)それぞれの役割を明確にした上で連携していくことが重要だ」と述べた。

何人かの委員は、企業倒産が増えて金融機関の信用コストが増加すれば「金融システム全体や金融仲介機能に波及するリスクがある」と述べ、丹念な点検が必要だと主張した。

景気の先行きについて、委員は、感染症の影響が終息していけば、ペントアップ需要(抑制されていた需要)の顕在化や挽回生産が予想されることに加え、緩和的な金融環境や政府の経済対策にも支えられて日本経済は改善していくとの見方を共有した。年後半以降、感染症の影響が終息に向かうことを前提に内外経済の成長ペースが高まっていくという「4月の展望リポートで示したメインシナリオは大きく変わっていない」と1人の委員が指摘した。

委員は景気・物価の先行きには「極めて不確実性が大きい」との認識で一致。多くの委員が「感染第2波が発生した場合には、経済活動が再び大きく抑制される可能性がある」との認識を示した。

*内容を追加しました。

(和田崇彦 編集:山川薫)