台湾は都市封鎖なし、外出自粛要請なし

台湾の高雄市は新型コロナウイルス感染症が世界中で蔓延する中、都市封鎖や外出自粛要請をせず、日常の社会活動を続けている。
都市圏人口は約280万人の大都市であり、台湾南部の港湾都市としても有名だ。2003年のSARS(サーズ)の教訓を生かし、徹底した公衆衛生対策と市民の高い防疫意識により、本土感染者は95日間感染症ゼロを継続している注目の都市だ(7月16日時点)
市民に対しては、外出でのマスク着用の徹底、頻繁な手洗いの推奨、目・鼻・口を手で触らないこと、検温の徹底、ソーシャルディスタンス(社会的距離1m)を保ち、感染しない、感染させない対策を進めてきた。
また、オフィスや公共施設等の施設に入館する際は、入館ゲートなどでの検温を徹底してきている。6月7日からは防疫措置の緩和を拡大し、例えば公共交通機関利用では、ソーシャルディスタンスを確保できる場合には、マスクを外しても可としている。各種イベント及び飲食店、スーパー、夜市等の人数制限も解除されている。
コロナ禍においても、子どもたちは学校に通い、会社に行って経済活動を行うなど通常の生活を過ごしている。

コロナ禍で躍進した高雄MaaS『Men-Go』

市内には、高雄メトロ(MRT)、バス、ライトレール(次世代路面電車)、自転車シェアリング(CityBike)、タクシーなどが運行し、2017年にはエコモビリティ世界大会の議長国を務めるなど、持続可能な環境都市としても世界的に高い評価を受けている。
コロナ禍においても、公共交通利用は30%の減少にとどまっている。
世界中が激減したことを考えると減少幅は小さいと言える。ただし、観光客も利用する地下鉄は、半減した時期もあったそうだ。一方で市民の足として定着している路線バスは20%減にとどまっており、1月以降自転車シェアリングは増加傾向という。
高雄市では、2018年10月から「Men-Go(メンゴー)」と呼ばれる定額乗り放題のMaaSをスタートさせている。4種類の乗り放題サービスを用意、その中で高雄メトロ(MRT)、バス(7事業者)、ライトレール、自転車シェアリング、タクシーをパッケージし、全てを乗り放題とし、アプリとスマートカードで利用が可能な次世代交通サービスがある。
市がMaaSを推進、MaaSのプラットフォームは民間事業者(中冠社)が開発、官民が上手く連携した取り組みだ。
前述のようにコロナ禍で公共交通需要は減少したものの、Men-Goの利用者は減少がわずかだったそうだ。マルチモーダルに様々なモビリティサービスがデジタルで統合され、多様な移動の選択肢がある新しいサービスが市民に評価された表れだろう。
市ではこのような結果を受け、新たに3月末から9月末までの半年間、定額運賃を最大50%割引とし、移動の回復を支援した取り組みを始めた。なんと、わずか1カ月でMen-Goの利用者が10%程度増加したそうだ。
移動需要の回復を狙いとして定額乗り放題の価格を最大50%オフに

感染予防を徹底し、市民の移動に安心を

台湾では、公共交通利用時にはマスクの着用を義務付けており、違反者には罰金が科せられる。罰金は、3000~15000台湾ドル(日本円で約9千円から5万円)と高額だ(6月6日までの運用)。
日本と同様に交通系ICカード(スマートカード)の普及が進んでおり、コロナ禍でのスマードカード利用を推奨している。車両の消毒も徹底しており、地下鉄は1時間に1回、バスは1循環する毎に1回消毒液による清掃を行っている。
台湾といえば、この間脚光を浴びたマスク配布システムに代表されるデジタル行政を記憶している人も多いだろう。しかし、新幹線や地下鉄の改札口にも最先端のシステムが導入されていることはあまり知られていない。
写真を見てほしい。改札入口の上部に検温器があり、発熱の方が通過しようとするとゲートが開かない仕組みとなっている。導入までのスピードもさることながら、利用者への安心に対する徹底ぶりには驚かずにはいられない。
検温とゲートが連動した最先端の改札入口(出典:高雄市交通局提供)
17年前のSARSによる経験は、交通事業者にしっかりと受け継がれており、今回のコロナ禍においては行政機関にいち早くノウハウが共有されたとのことだ。
行政の強いリーダーシップにより移動に対する安心な物理的な環境、安心を担保する心理的な環境が整えられ、その結果、移動を止めずに経済活動を続けている。
今からでも決して遅くはない。わが国も第2波、第3波への備えとして、高雄市の取り組みに学び、アジャイルに実践していってはどうだろうか?
最大50%割引の高雄市地元新聞記事はこちら(中国語)