【篠原かをり】生物学的にあり得ない、なんて事はあり得ない

2020/7/19
博覧強記の動物オタクとして知られ、「日立 世界ふしぎ発見!」のミステリーハンターとしても活躍する、作家の篠原かをり氏。
新刊『ネズミのおしえ』(徳間書店)を上梓したばかりの篠原氏が、生物界の「多様性」の核心を語る本連載。最終話では、新時代を生きる上できっと役に立つ「生き物との向き合い方」を考察する。

男と女のくくりは絶対的ではない

──新刊『ネズミのおしえ』で紹介されているネズミの生態には、「集団から孤立したネズミは攻撃的になったり、不安行動が強かったりする」「自分だけが嫌な思いをしていると感じると、ストレスが増大する」など、「ネズミごと」とは思えないエピソードがたくさん登場します。
一方で、「人間の常識」を覆すような発見もありますね。例えば「ネズミはメス同士で子どもをつくることに成功している」という話は驚きでした。
篠原 生物とは、知れば知るほど「なんでもあり」の世界です。
「メス同士で子どもをつくることができる」という発表は、2018年にもたらされました。遺伝子操作を用いた実験によって、メス2匹の細胞から生まれた子マウスが成長し、そのマウス自身も無事、子どもを出産したことが確認されたといいます。
もちろん、この研究が人間に適応されるには、倫理的・技術的に多くの問題を抱えているでしょう。ともあれ、「同性カップルが、異性カップルと同じように自分たちの遺伝子を半分ずつ受け継いだ子どもを授かることができるかもしれない」という、これまでになかった可能性がここに示されたわけです。
(anyaivanova/Getty Images)
この事例は人為的な操作によるものですが、自然界にも「男と女のくくりは絶対的ではない」ことを示す事例は見つかります。