セクハラの根源にある自然界の「オス-メス間衝突」

2020/7/16
セクハラが絶えないのはなぜか。
NewsPicks編集部はこの問題について、日本でまだ理解が浸透していない「性的同意」や、一部のリーダーが抱きやすいとされる「幻想」に着目。特集「セクハラ新常識」をお届けしたばかりだ。
木曜の夕刊「ディープな科学」では、さらに根源的な背景を掘り下げる。
実は、自然界では、オスとメスの間のコンフリクト(衝突、対立)が必ずある。原理的には、セクハラや男女格差も、その延長線上で起きていると考えられるという。
人類は果たして、こうした問題を解決できるのか。
ヒトを含めさまざまな動物の行動と生態について研究してきた長谷川眞理子氏が、格差や自己の確立をめぐる個人的なエピソードや、「多様性」の生物学的・社会学的意義を交えて解説する。

「おやじ社会」の日本

──著名人による、相次ぐセクハラ事件をどうご覧になっていますか。
長谷川 セクハラについては、20年前ぐらい前から、世界的に女性がいろいろと発言してきたのに、一向に変わらないのが日本だという気はします。
それから、責任を持って決断をする立場にいる女性が、日本にはほとんどいない。
女の人に働いてくださいとか、保育所用意しますよ、ということは散々言うけれど、トップに立って指揮したり決断したりする立場に女の人を持ってこようとはしない。学問の世界から、企業、政治と、全部そうです。
要は「おやじ社会」なのよね。それを変えないことには、根本的な問題は全く解決しません。
この点で、諸外国で一番進んでいるのはやはりEU(欧州連合)諸国でしょう。
クリスティーヌ・ラガルドさん(欧州中央銀行総裁)やフォン・デア・ライエンさん(EU欧州委員長)とか、トップの女性がたくさんいます。
EU諸国の上場企業の役員の女性比率も、多くの国で3割を超えています。
日本企業は、役員どころか課長以上の管理職に女性がゼロという会社が半分近くを占めている。しかも、この構造が再生産されるようにできているのね。
ある調査では、就職活動している大学4年生の男女に将来管理職になりたいかと聞くと、男女で同じ割合なんです。
就職1年目も同じ、それが2年目、3年目になると、管理職になりたくないという女子がどんどん増える。
最初のうちは志があっても、「おやじ社会」で2年、3年と働いて、これはもう無理、という気がしてくるのね。そう仕向ける風土がある企業もある。