ユヴァル・ノア・ハラリ、オードリー・タン対談「民主主義、社会の未来」全和訳
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注目のコメント
とても面白い。
中盤に、アルゴリズムによる政権乗っ取りの話がある。これは、今の日本政府を彷彿とさせる。
現政権の場当たり的対応は、アルゴリズムではないが、ネット世論に乗っ取られているようだと感じる。官邸主導の政治においては、上層部の議員や高官さえ説得できれば、事が動く。そして現政権は意外なほどネット世論を気にしているように感じる。
私の博士課程の研究テーマは、SNS時代には沈黙の螺旋理論の逆現象が起こる、つまりノイジーマイノリティが過度に行政や企業経営に影響してしまうのではないかということだった。サイレントマジョリティの声は届かないので、ネット世論はミスリードすることがあるという仮説だ。SNSでの発言なんて、あまり深く考えずにその場の気分で発していることも多いのに。
今の風見鶏のような政権が、アルゴリズムの声に耳を傾けるようになったら、一体どうなってしまうんだろう。アルゴリズムは常に正しいと言い切れるのだろうか。色々不安になる。
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この種のアルゴリズムによる乗っ取りは、ロボットの反乱のSFシナリオよりも、はるかに可能性が高いと思います。また実際には、民主主義政権よりも権威主義政権の方がアルゴリズムによる乗っ取りが、はるかに簡単に起こります。というのは必要なのは、上層部の人々がアルゴリズムを十分に信頼するようになることだけだからです。一方、民主主義では、アルゴリズムが乗っ取るためには、何百万人もの人々にアルゴリズムを信頼するように説得する必要があります。権威主義的な政権では、一握りの人々を納得させるだけで十分です。それに彼らには、権力者がすべての情報を収集し何もかも知っていることがいいことだという論理を受け入れる下地が、既にできているわけですから。ハラリがあんなに「AIの方が人間よりも人間のことをわかっている時代が来たら?」という問いに固執する理由として、自分の性的指向を、AIの方が先に気づいたかもしれない、という想像があったことを知った。興味深い。
ハラリ氏は歴史の話だけをしていればよかったのに、AI(ハラリ氏が言う所の「アルゴリズム」)に対するステロタイプな理解のために、トンチンカンな質問をタン氏に問いかけ、無理に哲学的な問いにしようとする、ということを何度も繰り返しているだけに思います。
適切な問い立てを行うことが哲学の役割とすれば、ハラリ氏は哲学者を演じていたということになりますが、テクノロジーに対する無理解のために残念ながら実のある対話ではなく、タン氏への質問コーナーとなってしまっていてちょっと残念です。
これは主催者側のテーマ設定ミスかも知れませんね。ハラリ氏が活かされていないのでもったいないです。