[香港 9日 ロイター] - 中国電子商取引大手アリババ・グループ<9988.HK>傘下の金融会社アント・グループが香港市場に上場する計画は、中国による国家安全維持法の施行で国際金融センターとしての将来が不透明になっている香港の資本市場にとって、タイミングの良い追い風になる、と複数のアナリストが指摘している。

リフィニティブのデータによると、今年上半期の香港証券取引所への新規株式公開(IPO)は41億7000万ドルと世界全体のIPOの7.6%を占めた。

これは米ナスダック市場、中国の「科創板(スター・マーケット)」、上海証券取引所に次ぐ第4位の規模。前年同期は79億1000万ドルでシェアは11%だった。

交銀国際の調査部門トップ、ハオ・ホン氏はロイターに、アントの上場で香港は多様性を増し、国際金融センターとしての地位を高めることができるとの見方を示す。

「香港の投資家はこうした中国のハイテク企業に投資する機会が多くない。香港市場の70%が金融業と不動産業だ」と指摘。「これらの企業が優良であることは否定しないが、未来の経済を代表しているとは言い難い」と語った。

エキタス・リサーチのアナリスト、ケ・ヤン氏はアントが香港市場に上場すれば、中国の主要なハイテクやメディア企業の上場先として香港が第1の選択肢になるとの見方を示した。

ロイターは8日、関係筋の話として、アントが年内にも香港市場で新規株式公開(IPO)を行う計画で、時価総額2000億ドル以上を目指していると報じた。アントは報道を否定している。

アントのIPOは香港の投資銀行にとって多額の手数料を得る機会となる。アリババが米当局に提出した資料によると、昨年香港市場に重複上場した際に支払った手数料は約3200万ドルだった。

アリババは香港上場で主幹事を務めたクレディ・スイス<CSGN.S>や中国国際金融(CICC)などとつながりが深いと言われている。