[フランクフルト 1日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のチーフエコノミストであるレーン専務理事は今週、ロイターとのインタビューに応じ、新型コロナウイルスの流行を受けて、ECBは多くの対策を打ち出したと述べた。その上で景気の回復が進行しており、市場も落ち着いているとし、今後は政策の効果を見極める意向を示した。

ECBは、新型コロナを受けた緊急の債券買い入れプログラムを来年6月まで継続する方針を示している。

レーン専務理事はこれについて、市場はすでに同プログラムがさらに延長されるとの見方を織り込み始めているが、ECBは最大1年間、状況を見極める方針だと発言。

「ECBは多くの措置を打ち出した。基本的には1年先を見据えている」とし「この1年先というのは、欧州経済が今回のショックからどこまで立ち直れるかを完全に把握できるまでの期間を反映している」と述べた。

同専務理事は、ECBが銀行に総額1兆ユーロの資金をマイナス金利で供給し、大規模なコマーシャルペーパー(CP)の買い入れを実施したことを受けて、市場は3月以降、落ち着いていると指摘。銀行は引き続き大量の流動性を保有していると述べた。

同専務理事は、企業調査や物価統計など最近の経済指標が予想を上回っており、良好な指標が「長期にわたって」続く可能性があるが、足元の回復は「冬に何が起きているかを把握する目安にはならない」と指摘。景気の回復は「2歩進んで1歩下がる」といった形で時々、中断する可能性が高いとの見方を示した。

ECBが投機的等級の社債を買い入れるとの観測については、近く大量の格下げが起きるとは予想していないとして、否定的な見方を示唆した。

同専務理事は「現在の格付けのバランスは妥当だと思われる。格下げが今後さらに大幅に増えることを示すデータはない」と述べた。

市場では、ユーロ圏のインフレ率がマイナスになるとの見方が一部で出ているが、同専務理事は、基本シナリオでは景気配慮型の財政・金融政策を背景にインフレ率は非常に低い水準ながらもプラスを維持との見通しを示した。

ユーロ圏では、新型コロナ対策で政府債務が増えており、ECBが将来、金融政策を引き締めれば、借り入れコストが上がり、イタリアなどの債務の持続性に対する懸念が浮上するとの見方が出ている。

同専務理事は、こうした見方について「無条件で正しい」とは言えないと発言。債務水準が高いというだけで、インフレの進行が妨げられることはないと述べた。

同専務理事は「ECBのフォワードガイダンスには多くの出口戦略が盛り込まれている」とし、条件が満たされば、出口戦略を実行できるとの見方を示した。

また、ECBは加盟国の国債利回りについて特定のスプレッドの目標を設定しておらず、利回りにターゲットを設定することは「絶対にない」とも述べた。