[東京 24日 ロイター] - 日銀が15日―16日に開催した金融政策決定会合では、出席者から主要株価指数の堅調推移について「先行きへの期待から、足元の実体経済の厳しさと比べると高値になっている。資産価格に修正が生じないか市場動向の注視が必要だ」とする意見が出た。新型コロナウイルス感染症の実体経済への影響は不確実性が大きく、「慎重に幅広い経済指標の点検が肝要だ」との意見が出ていた。再びデフレに陥ることへの警戒発言も目立った。

日銀は24日、この決定会合で出席者から出された「主な意見」を公表した。同会合で、日銀は金融政策の現状維持を決めた。

新型コロナで実体経済が急激に減速し、金融市場が動揺したことを受け、日銀は3月以降、対応策を矢継ぎ早に打ち出した。企業などの資金繰り支援、円や外貨の潤沢な供給、上場株式投資信託(ETF)などの積極購入の3本柱から成るが、決定会合では「新型コロナ対応で打ち出した日銀の政策措置はおおむね出そろった」との意見が出た。この意見を示した出席者は、当面は政策効果の丁寧な確認・検証が望ましいと述べた。

企業の資金繰りにはなおストレスがかかっているものの、間接金融・直接金融双方で緩和的な資金調達環境が維持されており、「3月以降の金融緩和措置は所期の効果を発揮している」との声も出た。

ある出席者は、引き続き3つの柱で「企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていくことが重要」と述べた。コロナ対応の3本柱は「さまざまな情勢変化に対応する余地が大きい柔軟な枠組み」との指摘もあった。

一方、「今後もさらなる政策対応が必要があれば、迅速に対応すべき」との意見も出ていた。この出席者は、政策対応では政府と日銀、各国中央銀行間の協力体制の堅持が重要だと述べた。

現在の局面を「緊急支援から経済回復推進へと局面が徐々に移行する状況」とし、「金融政策の経済刺激効果を改めて検討すべき」といった主張も出された。

<デフレ警戒相次ぐ>

新型コロナの感染拡大により、日銀の金融政策の重心は2%の物価安定目標に向けたモメンタムからコロナ対応に移った。6月の決定会合では物価の先行きについて「需要の急速な回復が期待しにくいもとで、『予測可能な将来に』物価がモメンタムを持って2%に近接していく姿を予想することは難しい」との指摘が出ていた。

ある出席者は「予想物価上昇率が2%にアンカーされないもとでデフレに陥ることは、物価目標達成の重大な支障になり得る」と述べ、先を見越して現時点で追加緩和が必要だと主張した。

このほか「感染症第2波で景気回復が遅れれば、雇用や資本ストックの調整を通じて物価の下落に波及するリスクには留意が必要」との指摘が出ていた。感染拡大の影響が業種や規模を問わず広範に及んでいることを懸念して「企業の倒産・休廃業の増加は雇用、物価と金融に悪影響をもたらしかねず、再びデフレに陥らないよう警戒すべき」といった意見も出ていた。

*内容を追加しました。

(和田崇彦)