[ソウル 24日 ロイター] - 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、党の中央軍事委員会を主宰し、韓国に対する軍事行動計画の延期を決定した。朝鮮中央通信社(KCNA)が24日伝えた。一方、韓国の聯合ニュースは、北朝鮮軍が南北の軍事境界線付近に最近再設置した拡声器を撤去していると報じた。

KCNAによると、23日にビデオ会議形式で行われた同委員会では、北朝鮮の「戦争抑止力のさらなる強化」に向けた措置についても話し合われたという。

KCNAは、委員会のメンバーは軍事行動計画の延期を決定する前に「現在の状況について精査した」としたが、詳細には言及しなかった。

その後、北朝鮮の金英哲(キム・ヨンチョル)朝鮮労働党副委員長はKCNAを通して発表した声明で、韓国国防相が北朝鮮は行動を一時停止ではなく撤回する必要があると国会で述べたことを批判。この発言は「愚かしく、不適切だ」とし、一段と深刻な危機が引き起こされないよう、韓国に対し「熟慮した上で賢明に行動する」よう警告した。

北朝鮮は、韓国の脱北者団体による体制批判のビラ散布活動に反発。南北連絡事務所を爆破し、韓国との対話を断絶すると宣言、軍事行動を警告するなど、このところ両国の間では緊張が高まっていた。

韓国軍の関係者は23日、ロイターに対し、北朝鮮が軍事境界線付近で宣伝放送用の拡声器の再設置を進めていると述べたが、聯合ニュースは匿名の軍関係筋の情報として、北朝鮮軍が24日に約10台の拡声器を撤去する様子が確認されたと報じた。宣伝放送用の拡声器は2018年の南北合意を受けて約40台が撤去されていた。

韓国統一省の報道官は、状況を注視しているとした上で、南北合意を維持すべきとの立場に変更はないと述べた。同省は、北朝鮮の複数の公式宣伝サイトが韓国に批判的な記事を一部削除したことも確認した。理由は不明としている。

韓国外務省の趙世暎(チョ・セヨン)第1次官は、米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)に対してオンラインで行った講演で、韓国政府が事態の悪化を食い止めるための取り組みを継続すると表明。「対話、確固たる関与、粘り強さが前進に向けた唯一の建設的な手段だ」とし、朝鮮半島の非核化と平和の実現に向け、米国と中国に協力を呼び掛けた。

米国の北朝鮮分析サイト「38ノース」のジェニー・タウン氏は、過去1週間の北朝鮮による韓国批判には柔軟な対応への余地が見られたとしながらも、今後どのような展開になるかは依然として不透明だと指摘。

「総合的に考えて、北朝鮮が過度に挑発的な行動を望んでいるようには見えない」とした上で、「今のところ、南北合意で決定した措置を劇的な形で後戻りさせる考えのようだが、南北連絡事務所の爆破以降はすでにトーンを弱めている」と語った。

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