[ワシントン 16日 ロイター] - 米商務省が16日発表した5月の小売売上高は前月比17.7%増と、市場予想の8%増を上回り、1992年の統計開始以降で最大の伸びを記録した。新型コロナウイルス流行の影響で過去最大の落ち込みとなった前月の14.7%減(改定)から大きく持ち直した。前年同月比では6.1%減少した。

5月の雇用統計は非農業部門雇用者数が250万人も増加したほか、企業のレイオフ(一時帰休)も収束しつつある。製造業活動は改善してきたが、生産量は依然かなりの低水準にとどまっている。

5月の小売売上高は大幅に回復したものの、3、4月の減少分を完全に取り戻したわけではなく、2月時点での水準を8%程度下回っている。4—6月期の個人消費や成長率は引き続き1930年代の世界恐慌以降で最大の落ち込みを記録する見込みだ。

ロヨラ・メリーマウント大学(ロサンゼルス)のビジネス経済学教授、ソン・ウォンソン氏は「経済と小売売上高は5月に底を打ち、V字回復の第1段階を迎えている。しかし、小売売上高や経済活動の水準が年初当時の水準に戻るにはかなりの時間がかかるだろう」と述べた。

新型コロナの感染拡大による都市封鎖(ロックダウン)の解除に伴い、5月は自動車関連やガソリン、衣料品、外食などの支出が増加した。自動車販売店の売上高は4月の12.3%減から5月は44.1%増と大幅な伸びに転じた。建築資材は10.9%増、ガソリンスタンドは12.8%増、家電は50.5%、それぞれ伸びた。

衣料品は188%急増。家具は89.7%、飲食は29.1%、娯楽・宿泊・楽器・書店は88.2%増加した。これらの部類はいずれも3、4月に過去最大の落ち込みを記録していた。

インターネット通販の小売売上高は9.0%増だった。

<消費支出の崩壊>

自動車、ガソリン、建設資材、食品サービスを除くコア小売売上高は、4月の12.4%減から5月は11%増加した。同売上高は国内総生産(GDP)の個人消費の構成要素と密接に関連している。

こうした中、エコノミストは、米国の経済活動の3分の2以上を占める個人消費が4—6月期に年率で50%落ち込み、GDP成長も48.5%程度縮小すると予想する。

1ー3月期の消費支出は6.8%減と、1980年4—6月期以来の大幅な落ち込みとなった。1ー3月期のGDPは5%減と、2007ー09年の金融危機以降で最大のマイナス成長だった。

政府はコロナ対策として1200ドルの現金や手厚い失業手当を給付するなど、消費の下支えに必死だが、エコノミストは、消費支出が危機を脱したわけではないと警告する。

国内では新型コロナウイルスの感染が再拡大する動きも見られる中、4月の個人貯蓄額は3370億ドル、貯蓄率は33%とそれぞれ過去最高を記録した。

ウェルズファーゴ証券のシニアエコノミスト、ティム・クィンラン氏は「過去最高の家計貯蓄は7—9月期以降の消費支出を強力に後押しすることが期待されるものの、それでも21年末の実質消費支出は19年末を約2.5%下回ることが予想される」と述べた。

5月の鉱工業生産統計は、製造業生産が3.8%増加し、コロナ禍の影響で過去最大の落ち込みを記録した前月の15.5%減から持ち直しに転じた。ただ、市場予想の4.6%増には届かなかった。

経済全体の1割強を占める製造業は、サプライチェーン(供給網)の障害が回復の足かせとなっている。また原油安が石油企業の業績を圧迫する中、重機などへの需要も低迷している。

PNCフィナンシャル(ピッツバーグ)のチーフエコノミスト、ガス・ファウチャー氏は「回復は向こう数年かけて緩やかに進むと予想される」とした上で「コロナ禍の影響で企業が供給網の縮小化を決定すれば、製造能力は米国に戻ってくる可能性があり、上振れリスクとなり得る」と指摘した。

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