[ロンドン 15日 ロイター] - 英ロンドンの通勤風景の混雑状況は多くの人々にとって悩みの種となっているが、新型コロナウイルスに伴うロックダウン(都市封鎖)の解除後には通勤手段がより大きな課題になる見通しだ。

列車やロンドン地下鉄、バスでの混雑緩和に向けた社会的距離ルールにより、ロンドンの輸送ネットワークの能力は85%減少した。今では公共交通機関を利用する人はフェイスカバーを着用する必要がある。

ロックダウン制限が徐々に緩和される中、多くの人々はシティ・オブ・ロンドンといったビジネス街にいかに早く安全にたどり着くかという問題に直面している。

ロンドン市長のコミッショナー(ウォーキング・サイクリング担当)、ウィル・ノーマン氏は「新型コロナ危機は市周辺の移動方法や輸送機関の運営方法について根本的に再考せざるを得ない状況にわれわれを追い込んでいる」と述べた。

新型コロナ流行前には、1日当たり最大500万人がロンドン地下鉄を利用し、100万人が列車で通っていた。ロックダウン期間中の在宅勤務がうまくいったことから、一部の人々は全ての制限が解除された後も在宅勤務を続ける可能性がある。その他の人々は別の通勤方法を検討することになるだろう。

<自転車販売急増>

ロンドン当局はサイクリストや歩行者向けの新ルートを増やした。自転車の販売が急増しているほか、ボート運航業者は市内を流れるテムズ川でのサービス強化を検討している。

市内南部のサイクルショップ、ブリクストン・サイクルのテリー・グリーン氏によると、3月と4月の自転車販売は昨年に比べ3倍になったという。

ただ、グレーター・ロンドンは香港やニューヨークといった金融センターよりも広く、その他多くの都市に比べ自転車利用に適していないとみられている。

ロンドン交通局によると、新型コロナ流行前のロンドンにおける移動に占める自転車の割合はわずか2.5%に過ぎない。多くの人にとって距離が問題だ。2015年のデータによると、ロンドンで働く人々の毎日の通勤距離は平均18キロだった。

慈善団体ロンドンサイクリングキャンペーンのサイモン・ムンク氏は「自宅から勤務先に快適に自転車通勤ができるようにするため」ロンドン周辺に達する大規模な自転車道路ネットワークを求めている。

一方、オックスフォード大学のティム・シュワネン教授(交通研究・地理学)は、ロンドン中心部の生活コストの高さは賃金の比較的低い多くの労働者がより遠方に住んでいることを意味し、自転車通勤は難しいと指摘。「多くの人々の通勤形態を変えるのに良いインフラだけでは不十分だ」と述べた。

(Sarah Young記者、Paul Sandle記者)