[ワシントン 10日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は4月末に行われた連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、今後数カ月内に新型コロナウイルス感染の第2波や第3波が訪れ、国内景気に大打撃を与える可能性に繰り返し言及した。

それが9━10日に開いた今回のFOMC後の会見では、景気が回復しても再就職できない恐れがある多数の失業者の問題を中心的に取り上げた。

全米の大半で外出制限が敷かれ、景気が大幅に悪化した3月半ばから4月下旬と同様の経済封鎖が、再び実施されるとの懸念は消えたかのようだ。

パウエル氏は10日の会見で、第2波の可能性について問われ「いつ経済を再開するかの決定は州・地方・連邦レベルの政治家に委ねられており、われわれとして特別に追加すべきことはない」と慎重な回答にとどめた。

実際に多くの州は、保健当局者の警告には従わずに経済活動の再開を開始。一方、ロイターの集計によると、国内の新規感染者数は5週連続で減少した後、再び小幅に増加している。

アジアや欧州の諸国は、新規感染者が安定的に大幅減少するのを待って経済再開を決めたが、米国の多くの州知事は経済成長よりも公衆衛生上の危機への対応を優先できる期間は限られていると繰り返し強調してきた。

FRBは国内のこのような動きをある程度、経済見通しに織り込んだようだ。パウエル氏は、5月の雇用統計で非農業部門雇用者数が予想外に前月比250万人増となったことは、労働市場が底を打った可能性を示していると分析。

「全米でのソーシャルディスタンシング(社会的距離)制限の緩和で人々の移動が増え、多くの企業がそれぞれ程度は違うが業務を再開している」と表明。同時に将来についての不確実性はなお高いとした。

10日に公表されたFRBの経済見通しは、景気回復は今年下半期に始まり、今後数年間続くと予測した。今後の課題として浮上したのは、再就職先を容易に見つけられない人々への支援だ。

一方、新型コロナ感染の第2波で大きな経済的ショックがもたらされる可能性について、パウエル氏は、全米の封鎖よりむしろ、感染者の急増が局部的に起こり、回復で出遅れている観光や外食、娯楽といった業界への人々の信頼感が悪化する公算が大きいと分析した。「前向きな動きにはならない。それ以上はコメントしない」と語った。