【WEEKLY OCHIAI】アフターコロナの飲食・小売はどう変わる?

2020/6/9
「WEEKLY OCHIAI」では、新型コロナウイルスについての最新情報の解説とコロナショックがもたらす新しい未来の可能性をめぐって、落合陽一と各界のプロフェッショナルによる“ハードトーク”をお届けしています。

この記事は6月3日に配信された「アフターコロナのリアル 飲食・小売編」のダイジェスト記事です。
番組本編の視聴はこちら(画像タップで番組ページに遷移します)

現場でたたかう人の手触り感ある話を

「今日の顔ぶれを聞いて、スタッフに「偉業」ってスタンプを送ったんですよ。」
番組ホストの落合陽一は、この日の冒頭で、いつも以上に目を輝かせてこう話した。
「空中戦の議論だけしていても世界は変わらない。」
そんな問題意識からこの日はスタジオに招く論客の他に、Zoomでの“ライブ取材”で現場で奮闘する人々の話をヒアリングする仕掛けを用意した。

アフターコロナは“7割経済”に

この日、小売を代表する論客として登場したのが、マザーハウス副社長の山崎大祐氏。
山崎氏は、今の日本の失業率は他国に比べると低く、経済的にはダメージがまだ出ていない状況だという前提で、飲食や小売りの抱える大きな課題についてこう唱えた。
山崎 キーワードは「7割経済」です。
ソーシャルディスタンスが1.5mと考えたときに、たとえば映画館やレストランなどの今までのキャパシティ的に、経済は7割くらいしか戻らないだろうと考える。
山崎 これからはその前提でビジネスを考えていかないといけないですし、その場合、長期的な目線で見ると多くの飲食店が厳しい。
そうすると、会社としては単価を上げるかコストカットするしかない。
人を切るか、オリジナリティを高めるか、その二択になる。

Case1.コロナ前より売上増の1つ星店

いよいよ、Zoomでのライブ取材に移る。
まず最初は、代々木上原のミシュラン1つ星店「sio」オーナーシェフの鳥羽周作氏。
鳥羽氏は最高で2万円する「sio弁当」という贅沢なテイクアウト商品を発売するなど、コロナ禍で新たな試みに取り組んでいる。
鳥羽 コロナ初期は売り上げも落ちました。
しかし、Twitterでの自分たちのレシピを公開したり、テイクアウトも高単価なものと低単価なものの2種類に分けたり、色々な軸で営業をしていくことで、以前の10割を超えるくらいの利益を出すことができています。
鳥羽 ステイホームしている人に向けて再現性の高いレシピをTwitterで公開したり、レストランのイズムが入った安価なものを提供したり。
その結果、今までリーチできなかった層にレストランの体験価値を届けることができています。

Case2.オンラインで新規顧客を開拓

次に登場したのは、神奈川県逗子市にある「スナック松」のさやかママだ。客とスナックをつなぐサービス「オンラインスナック横丁」を活用している。
さやかママ オンラインは初めての試みでしたが、かなり需要があるなというのを確信しました。
男女比だと、女性が7割ですね。
スナックといえばクローズドな場所で常連さんだけを接客するのが主流のビジネスだったのですが、オンラインスナックによってオープンな状態で国内外からご利用いただけている。

Case3.仮想空間に進出した百貨店

最後に登場したのは、アバターへのファッション価値やライフスタイルを提案する「仮想店舗」を試行中の三越伊勢丹ホールディングスの仲田朝彦氏。
三越伊勢丹は、4月に世界最大のVR空間で開催された「バーチャルマーケット4」に出展して話題を呼んだ。仲田氏はその仕掛け人だ。
仲田 想定の20倍以上のお客様にご来客いただき、手応えを感じました。
仲田 まず、百貨店のお客様の年齢が高齢化しているという現状がありますが、アバターを使っているのは10代から20代の若者。
オンラインでもファッションは自己実現のためのソリューションになるな、と思っている。
たとえば百貨店の課題である”次世代のお客様”や”24時間営業”を可能にするなど様々なメリットがあると思っています。

飲食業は「ファンビジネス」である

この日のスタジオにはもう1人。
飲食を代表する論客が、タピオカブーム火付け役としても有名なオアシスティーラウンジ代表取締役の木川瑞季氏だ。
アフターコロナのあとにお客さんが戻ってくるお店と戻ってこないお店の違いについてこう考える。
木川 結局、飲食業ってファンビジネスだと思うんです。
一方的に商品を提供するのではなく、相互で関係性を作っていくことが大事です。
やっぱりファンがついていないお店は、コロナのあとに営業再開しても戻ってこないと思うんです。
そういう仕組みをコロナ禍で作ることができたかどうか。本来であれば、コロナ禍以前に作っておくべきだったのですが。

「食べる」を外して考えてみる

慶應義塾大学医学部教授の宮田裕章氏は、日本経済における飲食業の重要性と共に、改善に向けたヒントを提示した。
宮田 日本の食は観光資源としても世界からお客さんを呼べるレベルのもので、ここで潰してしまうと未来のインバウンドを失ってしまいます。
まず「食べる」ことを外して考えるのが大事です。
日本人は味を至上において考えてきたけど、美味しいものがなかったらあの空間ってまたく素敵じゃないな、と。
宮田 三密の塊だし、改善の余地が山ほどある。
体験価値のど真ん中にある食べ物を抜いた上で、オンラインスナックのように別のものでつなぐと新たな価値が生まれるのかな、と思います。

デジタルのフットワークの変化とエンゲージメントの変化を繋げられるか

「これが全体最適な話なのかどうかはわからないけど…」
この日の議論の最後に番組ホストの落合陽一は、小売と飲食の未来を左右するポイントを次のように総括した。
落合 これはコロナ以前からも言える話ですが、デジタルによって人々のフットワークが変わったんです。
電車に乗らなくてもいいし、料理は配達員が届けてくれるかもしれない。
そのデジタルのフットワークの変化を、飲食店や小売りがエンゲージメントの変化につなげられるかどうかがひとつの視点になってくると思います。
番組本編の視聴はこちら(画像タップで番組ページに遷移します)
<執筆:富田七、編集:安岡大輔>