【夕刊】リスト公開:本番前にプロが聴く「一曲」

2020/6/3
特集「アスリートはなぜ試合前に音楽を聴くのか」。
最終回の今回は、一流アスリートが実際にどんな音楽をオーダーメイドしているのか、そのリストを一挙公開する。
※本記事はSportsPicks1月21日配信の記事を有料会員向けコンテンツとして再編集したものです。

高パフォーマンス時の状態とは

試合前に音楽を聴く。
パフォーマンスの向上のために、アスリートが取り組む一つの方法である。
その具体的な方法は「オーダーメイド」。
#1で紹介した認知脳科学者の柏野牧夫氏の言葉だ。
「それぞれの過去の経験と合わせて”『適切』な状態”(能力がもっとも発揮しやすいだろうと言える状態)を作る音楽は変わります。それを見つけられさえすれば、パフォーマンスを上げる一助となりうる。
アスリートも人間も多様な経験を持っていますから、それに合わせることが必要です。曲調が大事といいう人もいれば、歌詞が自律神経に働きかけることもある。それを見つけることが大事で、そこには過去の経験は欠かせない要素でしょう」
【集中力】どんな音楽を聴けばパフォーマンスが上がるのか
つまり、「アップテンポがいい」とか「ゆっくりした音楽がいい」「この音階、この調性が効く」といったものではなく、個々の体験や状態において、それぞれに決められる。
それは、パフォーマンスが最大限発揮されるときに身体及びそこに指令を出す脳の状態が、人によって変わってくるからだ。
#1では、「適切」な状態の基準を「ヤーキーズ・ドットソンの法則」に求めたが、ここにはまだまだ検証の余地が残されている。柏野氏は指摘する。
「我々の最近の研究で、プロ野球投手の実戦登板では、心拍数が160〜180くらいにまで上がっていることがわかっています。これは『適切』などというものではなく、あきらかにものすごくストレスがかかり、交感神経が賦活(ふか)している状態と言える。
注目すべきは、それでもパフォーマンスが高い選手は存在する、ということです。つまり、一流選手は非常に緊張しながらいい結果を出している」
トップアスリートになると、「自分自身にとって適切な状態」がどういうものか、経験的にわかっている。だからこそ、その状態に導く方法を各々作り上げるのだ。

一流アスリートの「オーダーメイド」

では実際に、トップアスリートたちはどうやって「音楽をオーダーメイド」しているのか。
どんな音楽を聴き、どういう理由で決めていくのか──。