【アパレル全史】危機の時代を乗り切る「ブランド力」

2020/5/16

アレッサンドロ・ミケーレの革新

──『「イノベーター」で読む アパレル全史』では、ファッションの歴史を「イノベーター」を軸に解説されていますが、現在、最も影響力を持っているファッション界のイノベーターは誰なのでしょうか。
中野 ここ数年、世の中に対して最も影響力のある発信をしたのは、グッチのクリエイティブディレクターを務めているアレッサンドロ・ミケーレでしょう。彼の仕事が、結果的に、世の中を大きく動かしていますね。
今年の3月、ユニリーバがすべての採用活動において、履歴書の性別欄ほか一切の性別に関わる項目を廃止したことが話題になりました。これは、元をたどればミケーレの発信に行き着くと思っています。
ここ10年で、ジェンダーの考え方はガラリと変わりました。
2010年ごろは、ファッション業界でも世の中でも、モデルのアンドレア・ペジックのような「トランスジェンダー」が、男としても女としてもカッコいいと考えられていました。
しかしミケーレは、ジェンダーそのものを「なし」にしてしまったのです。