[12日 ロイター] - 米フィラデルフィア地区連銀のハーカー総裁は12日、新型コロナウイルス感染拡大による危機からの景気回復は一様でないとし、感染拡大抑制策を性急に緩和し感染拡大の第2波に見舞われれば、景気は再び悪化すると警告した。

ハーカー総裁はデラウェア州商工会議所向けにビデオ形式で実施した講演で、経済活動が6月に再開され、秋に感染拡大第2波が起こらないという最善のシナリオと、性急な経済活動の再開により第2波に見舞われるという悲観的なシナリオが、経済のたどる道筋として想定されると指摘。悲観的なシナリオが現実化した場合、「公衆衛生上の打撃となるだけでなく、景気回復も転覆する」と述べた。

その上で、景気回復が始まったとしても、製造業が旅行・レジャー産業に先駆けて回復するなど、各産業が一様に回復する公算は小さいと予想。銀行は商業用不動産など問題を抱える部門に「極めて高いエクスポージャー」を持っているため、回復に差があることは銀行部門の問題につながる恐れがあるとし、銀行は現時点で大規模な配当金を支払うべきではないとの考えを示した。

また、米経済が下半期に急速に回復したとしても、上半期の落ち込みを埋め合わせられない公算が大きいと指摘。「第2・四半期のデータは極めて痛ましいものになる」とし、「今後の動向は、新型ウイルス感染状況がどのような展開を見せるのか、そして、われわれが外出自粛と『知的』な経済活動の再開との間のバランスをどのように取っていくかにかかっている」と述べた。

さらに、新型コロナ危機はすでに問題を抱えていた農業や小売りなどの業界に一段と圧力になっていると指摘。消費者行動や経済全体に継続的な影響をもたらすとも述べた。

このほか、スポーツイベントや大規模集会に出掛けようと思うにはしばらく時間がかかるだろうとし、新たな仕事のために職務訓練に投資する必要も一部で出てくるとの考えを示した。

*内容を追加しました。