和田崇彦

[東京 12日 ロイター] - 日銀は12日、新型コロナウイルス対応の特別オペに参加する金融機関を新たに発表した。制度拡充後初めての発表には、地方銀行を中心に40の金融機関が名を連ね、特別オペに参加する金融機関は合計74と従来の34の2倍超。オペの利用残高に相当する当座預金にプラス0.1%の付利を行うという日銀の「工夫」が実った形となった。

12日に発表された参加金融機関は、常陽銀行、横浜銀行、静岡銀行<8355.T>、鹿児島銀行など。参加を決めた地銀の幹部は「顧客の資金ニーズが非常に強まっている。先行きも不透明で、安定的な資金調達先を確保しておきたかった」と話した。  

<プラス0.1%の付利が呼び水に> 

新型コロナの感染拡大で経済活動がストップし、企業の資金繰り懸念が急速に高まったことを受け、日銀は3月に金融機関向けの特別オペを創設したが、当初の参加金融機関はメガバンクなど大手行が中心だった。

日銀内では、地方の中小企業の資金繰り支援を徹底するために、地銀の参加を促すような仕組み作りが必要だとの声が浮上。4月の決定会合でスキームの拡充を決めた。具体的には、適格担保を住宅ローン債権信託受益権などに拡大し、対象担保を約8兆円から約23兆円に増やした。

さらに、当座預金の三層構造のうち、ゼロパーセントが適用される「マクロ加算残高」に、利用残高の2倍を加算する措置を継続するとともに、新たに利用残高に相当する当座預金にプラス0.1%の付利を実施することにした。

黒田東彦総裁は12日の国会での答弁で、金融機関に付利を実施することについて「金融機関に企業の資金繰り支援を促進してもらうためだ」と説明した。ある地銀の幹部は「付利がつくことで、二重にも三重にも魅力的になった」と話した。

市場からは、運用難の地銀が日銀の特別オペを「運用先」として活用することを見据え、「短期金利に上昇圧力が掛かるのではないか」(大手証券)との声も出ている。 

<相次ぐ資金供給オペに冷ややかな声も>

特別オペに参加する地銀が増えることで、各地域の中小企業に必要な資金が行き渡る可能性が高まった。政府が打ち出した資金繰り支援制度を踏まえ、日銀はさらに新たな資金供給手段を検討中で、黒田総裁は6月の金融政策決定会合を待たずに決定する方針を重ねて示している。 

もっとも、日銀による相次ぐ資金供給オペに冷ややかな声も出ている。ある銀行アナリストは「金融機関自体は資金繰りにそれほど困っていない。今回、地銀の参加が急増したと言っても、『お付き合い程度』の関わり方しかしないだろう。オペでも、金額はそれほど取りにいかないのではないか」と話す。

(編集:石田仁志)