[東京 1日 ロイター] - 日銀が1日に公表した3月16日の金融政策決定会合の議事要旨によると、金融機関が仲介機能を十分に発揮するために潤沢な資金供給を行うべきだと何人かの委員が指摘した。このうち1人の委員は、長期金利の上昇に対応するため、積極的な国債の買い入れなどを求めた。

日銀が長期金利の変動を容認していることについては、ある委員が「市場調節方針としてあいまい」と指摘。オペの運営次第では金利が必要以上に上昇し、イールドカーブ・コントロール(YCC)の効果を阻害する恐れがあると述べていた。

3月の決定会合当時、新型コロナウイルスの感染拡大で金融市場は不安定な動きを続けていた。長期金利はゼロ%程度で推移していたが、ボラティリティーが上昇。投資家のリスク回避で「現金化」が強まり、金利に上昇圧力が掛かっていた。

日銀は決定会合で、上場株式投信(ETF)の買い入れ目標を年6兆円から12兆円に倍増することなどを柱とする追加緩和を決めた。企業の資金繰り支援のため、新たなオペの創設も打ち出した。

委員らは、企業金融の円滑確保に万全を期すとともに市場の安定を維持し、企業や家計のコンフィデンス悪化を防止する観点から緩和の強化が適当との認識で一致した。

ある委員は「金融機関向けに有利なレートで資金供給を行い、企業への貸し出しを促すことや、CPや社債買い入れの増額は、企業金融を支援するのに有効な手段だ」と述べた。「ETF等の買い入れ増額でリスク・プレミアムの拡大を抑制し、金融市場の安定を確保するべきだ」との意見が複数の委員から出された。

一方、ある委員は「感染拡大防止策が講じられている局面で金融政策に求められるものは、需要の刺激ではない」との見方を示した。

決定会合では、新型コロナの内外経済への影響は不確実性が大きく、当面は影響を注視し、必要なら躊躇なく追加緩和を打ち出すことで一致した。

日銀は定例会合の予定を前倒し、3月16日の1日間に短縮して金融政策決定会合を開催した。「経済・物価情勢によっては臨時会合開催も含めた機動的な対応も可能なほか、長期国債も残高の増加額年間約80兆円のめどまでは買い入れうる」と1人の委員が指摘した。複数の委員は、政府や主要中央銀行との間で緊密に情報共有しつつ、強固な協力体制を維持することが重要だと述べた。

国内景気の先行きについては、当面は新型コロナの影響で弱い動きが続くものの、各国の対応などで影響が和らげば、「所得から支出への前向きの循環メカニズムに支えられ、緩やかな拡大基調に復していく」との見方を委員らは共有した。ただ、何人かの委員は、経済・物価の下振れリスクが高まっており、2%の物価安定目標に向けたモメンタムが損なわれる恐れが高まっていると指摘した。

*内容を追加しました。

(和田崇彦 編集:田中志保)