【徹底検証】睡眠の質が上がる「自分に合うマットレス」とは

2020/4/24
日々のパフォーマンスを高めるため、睡眠の「質」に注目するビジネスパーソンが増えている。就寝環境、食生活、入浴など、質を高めるためのアプローチはさまざまだが、やはりもっとも気になるのは、マットレスや枕などの「寝具」だろう。
とはいえ、巷で「良い」とされる寝具は無数にある。では、どんなポイントに注目すれば、無数の選択肢の中から自分に合う寝具を見つけられるのか。『最高の体調』などの著書を持つサイエンスライター・鈴木祐氏と、スリープアドバイザーが常駐し、50種類以上のマットレスを比較できる大塚家具に向かった。

一晩の徹夜でIQは学習障害レベルにまで低下する

近年、働き方改革などの影響もあり、私たちは短時間で最高のパフォーマンスを出すことを求められている。それにともない、体調を整えてパフォーマンスを上げるべく、「睡眠」に注目するビジネスパーソンも増えているようだ。
睡眠とパフォーマンスには、どれほど密接な関係があるのだろうか。
「睡眠には、疲労回復、免疫機能の増加など、主に身体に関わる役割だけでなく、脳の休養、記憶の固定、感情整理など、日々のパフォーマンスを左右する役割もあります」と語るのは、『最高の体調』などの著書を持ち、自身を実験台に最高の体調を追求するサイエンスライター・鈴木祐さんだ。
「睡眠とパフォーマンスの関係を示すデータはいくらでもあります。たとえば、睡眠不足だとIQが下がります。
『試験前日は一夜漬けをするより、よく寝なさい』という先生たちのアドバイスは正しくて、一晩徹夜すると、学習障害と診断される程度までIQが低下した実験結果もあるほどです。
また、睡眠が足りていないと、体内で炎症も起こります。体のさまざまな機能のリソースが炎症に持っていかれてしまうので、当然パフォーマンスは上がりませんし、炎症が脳で起きれば、思考力はてきめんに低下します」
睡眠不足は翌日のパフォーマンスを著しく低下させることがわかっている
たとえ暴飲暴食を数日続けても、体調にも体型にもそこまで劇的な変化は起きない。一方、一晩寝ないと、どんなに体力がある人でも翌日はボロボロになってしまう。
「そんな状態でバランスのいい食事をしても、焼け石に水」と鈴木さん。つまり、他のどんなことよりも体調への影響が劇的で、体調のことを考えれば、最初に改善すべきなのが睡眠なのだ。

床で眠る「古代人=鈴木さん」にマットレスをレコメンド

そこで、鈴木さんとやってきたのが、マットレス400種類以上、枕20種類以上を取り扱う大塚家具だ。
シモンズ、シーリー、レガリア、フランスベッドなどの有名ブランドはもちろん、1万円台から200万円超のものまで、価格もスペックも多種多様なマットレスを一度に試せるのが大塚家具の特徴。高級なイメージがあるが、どのブランドのベッドでも「最低価格」を保証している。
たしかに、睡眠の質を高める方法は巷にあふれている。鈴木さん自身、「クロノタイプ=生まれつき備わっている体内時計のパターン」に合わせて最適な就寝時間を定めるなど、良質な睡眠のためにさまざまな工夫を行っている。十分すぎるほどだ。
しかし、鈴木さんにはたったひとつ、普通の人が最初に行うであろう工夫が不足している。なんと、床で寝ているのだ。
「不眠・肥満・鬱・不安などの『文明病』は古代には存在しませんでした。実際、現代でも狩猟採集生活をしている部族にはそのような症状はほぼ見られなかった。
そこで、古代の人たちの生活リズムや食生活をお手本に、遺伝子とのミスマッチをなくし、不調を解消する実験を続けています。そのひとつが、床で眠ることなんです。まぁ明確なエビデンスはないので、あくまで個人の人体実験ですが。
最初は体が痛くて眠れなくて、仕方がないから背筋(はいきん)を滅茶苦茶に鍛えたら、やっと眠れるようになりました(笑)」
健康意識が高い、高すぎる。高すぎて変人の一歩手前だ。一緒に話を聞いていた大塚家具のスリープアドバイザー・関口賢司さんも、「背筋(はいきん)をマットレスがわりにするお客様ははじめてです……」と、純粋に驚いている。
「床で眠るのはあくまで実験で、マットレス否定派ではないんです。今日はプロにアドバイスしてもらえるので楽しみです」と、鈴木さん。
こうして、日本でもトップクラスに過酷な就寝環境からのマットレス選びがはじまった。

自分に合っているか、マットレス選びのポイントとは

鈴木さんの就寝環境はさておき、そのマットレスが自分に合うかどうかは、どのようなポイントでチェックできるのか。「眠りのプロ」関口さんによれば、ポイントは大きく2つ。
「仰向けになって、腰の下に手を入れてみてください。隙間があると、寝ているときに反り腰になり、腰痛の原因になります。腰の下に隙間がなく、腰が浮かないマットレスを選びましょう。
これが、お尻などの凸部にかかる負担が軽減された、適切に体圧分散された状態です」(関口さん)
腰の下に隙間ができやすいのは硬いマットレス。一方、柔らかすぎるマットレスは、時間の経過とともに腰部分が沈み込み、姿勢が「くの字」になってしまうことも。これも腰痛の原因になるので、硬すぎるものも柔らかすぎるものも避けること。
立っているとき、人の身体は理想的なS字ラインになっている。このS字ラインを、自然な状態で保ってくれるマットレスが理想的なのだ。
「体圧分散が適切に行われていれば、マットレスの硬さは好みで選んでいただいて大丈夫です。硬さを確認するときは、横向きに寝たほうが体の沈み具合がわかりやすいので、試してみてください。
そのうえで、いつも寝付くときの姿勢で試してみて、一番心地良いマットレスがベストです」(関口さん)
仰向けの場合は、良い立ち姿のまま寝転んでいる状態。横向きの場合は背骨が真っ直ぐになっている状態が理想的。
ただし、床で眠れてしまう鈴木さんの例からもわかるように、人は慣れる生き物だ。せっかくたくさんの選択肢があっても、「今の就寝環境に近いもの」を選びがちだという。少し冒険するくらいの気持ちで、「一番良いもの」を選び出そう。
大塚家具では、有資格者「スリープアドバイザー」が一人ひとりにぴったりのベッド探しを全面サポート。正しい睡眠のリズムや寝姿勢のポイントまでアドバイスしてくれる。
もちろん「予算に合わせたベスト」という選択も可能。寝心地とは関係のないベッドフレームは抑えめの価格から選び、マットレスに予算を投入するというのもひとつの手だ。

レガリア、シーリー、フランスベッド。「ぴったり」はどれだ

まず最初に試したのは、ショールーム内でもっとも柔らかいマットレスと、もっとも硬いマットレスだ。極端な例を体験し、柔らかいマットレスから順に「もう少し硬いほうがいい」などと微調整して、好みの硬さに近づけていくやり方がいいという。
この日は、極端な2例(①もっとも柔らかい、⑤もっとも硬い)の後、②やや柔らかい、③やや硬い、④硬いの5段階で試していった。
もっとも硬いマットレスに寝る鈴木さん。「硬いほうも結構好き」という感想は、マットレス「レス」生活ゆえか。
次に試したのは、②やや柔らかい「レガリア パーフェクション」。レガリアは、100年以上の長きにわたり最高の眠りを追求してきた米国キングスダウン社と大塚家具が、最新テクノロジーを駆使して共同開発した、大塚家具のオリジナルマットレスブランドだ。
独自の多重構造によるクッション感と優れた弾力性が、体のラインに添った寝姿勢を保持してくれる。鈴木さんも「体がマットレスに包まれる感覚。これなら枕もいらないくらい」と、感動する。
「レガリア パーフェクション」の詳細は画像をタップ。
次に試したのは、③やや硬い「シーリー クラウン ジュエル オニキス」。高級ホテルでも採用されているので、旅先で試したことがある人もいるだろう。
整形外科医の協力のもと、「ポスチャーテックコイル」という独自のコイルを開発し、どんな体型や体重の人も理想の寝姿勢に導く「医学的に正しい構造」のマットレスを実現している。
関口さんのアドバイスに従って、横向きも仰向きも試してみる鈴木さん。「一気に試してもこれだけ迷うんだから、別の日に試したら絶対に感覚忘れるな(苦笑)」。
硬めのマットレスに対して反応がいい鈴木さんのため、関口さんが最後に提案したのが、④硬い「フランスベッド EZ-BAEデラックスAS」。新素材+体圧分布の優れた「高密度連続スプリング」を使用したマットレスが、あらゆる方向から体を支え、快眠に導いてくれる。
メイド・イン・ジャパンなだけあって、高温多湿の日本の気候にマッチした抜群の通気性も特徴だ。
鈴木さん、マットレスの上でおもむろに腹筋をはじめるの図。ここまでアクティブにチェックする必要はないが、マットレス選びには動きやすい服装がおすすめだ。
最終的には、「ほどよい硬さ、寝返りの打ちやすさで、③やや硬い『シーリー』が一番自分の好みだった」と鈴木さん。プロの関口さんから見ても、きちんと体圧が分散され、理想的な寝姿勢が保たれた正しい選択だったようだ。
過酷な就寝環境にあるだけに、背筋にはないマットレスの素晴らしさを感じた様子で、「買っちゃおうかなぁ」という帰り際のつぶやきを、筆者は聞き逃さなかった。

情報に惑わされるなかれ。マットレスは「寝ないとわからない」

5段階に分けてマットレスを試すこと、約1時間。今回は、取材ゆえに多少駆け足になったが、プロがつきっきり、1日がかりでじっくり選ぶこともあるそうだ。逆に、多くの種類を寝比べられる大塚家具の環境を活用せずに帰ってしまうケースもある。
「有名ブランドの高価な製品は、たしかに高品質ですが、自分にとってのベストかどうかはまた別の話です。ネットなどの少々偏った情報から『自分にはこのマットレス』と、指名買いで来られる方もいますが、ぜひいろいろ試していただきたいですね」(関口さん)
一口に腰が痛いといっても、横向きで硬いマットレスに寝ているのが問題だったり、マットレスではなく、枕の高さが合っていなかったりと、原因はさまざまだ。自己判断で決めるには、私たちがマットレスの上で過ごす時間はあまりに長い。
番外編。マットレスだけではサポートできない頭と頚椎を支え、寝姿勢をより理想的な状態にするために、枕選びも重要だ。マットレスと枕には「相性」があるので、マットレスを替えるタイミングで見直そう。
また、ポケットコイルなのかボンネルコイルなのか、コイルは何個入っているのかなど、スペックを気にしすぎるのも「もったいない」選び方と言える。
「たとえばダブルサイズで2人で寝る場合は寝返りの振動が伝わりにくいポケットコイルのほうがいいけれど、シングルに1人で寝る場合は、気にする必要がありません。
また、柔らかいマットレスのほうが体にぴったりと『合う』感覚は強いけれど、硬めのマットレスのほうが寝返りを打ちやすい。
どんなマットレスにもメリット・デメリットがあります。ご使用状況がわかれば適切にご提案できるので、ご来店いただいたら、情報から解放されて無心で選んでもらいたい」と関口さん。
番外編2。一年を通して使えるだけでなく、干さなくても快適に使い続けられる利便性から、大塚家具で一番売れている羽毛布団「ダウナ」。優れた弾力性と復元力に驚かされる。
思い込みの検証も含めて、実際に寝てみて、そこからベストな寝具を導き出すのが正しいマットレス選びのお作法だ。納得いくまでじっくり検証して、ぜひ快適な睡眠を。
(取材・文:大高志帆 撮影:小池彩子 デザイン:月森恭助)