[シカゴ 9日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が、新型コロナウイルスとの戦いで最前線に立つ州・地方政府の支援に向け、地方債買い取りに5000億ドルを振り向けると発表したことについて、市場の緊張を和らげる一定の効果はあるとアナリストは評価する。ただ、税収減による地方財政の悪化は食い止められないとみられる。

ミュニシパル・マーケット・データ(MMD)のアナリスト、グレッグ・ソルニア氏によると、FRBの発表を受けて地方債の価格が上昇し、トリプルA格付けの地方債の利回りは6─10ベーシスポイント(bp)低下。上場投資信託(ETF)「iシェアーズ・ナショナル・ミュニ・ボンド」<MUB>の価格は同日に0.8%上昇した。

FRBの計画によると、全50州と人口200万人以上の郡ならびに人口100万人以上の市が発行する償還期限が最長で2年の地方債を直接買い取る。州政府のほか、10市、13郡と首都ワシントンが対象となる。

新型コロナ対策で事業所閉鎖やサービス業が営業停止となるなか、失業者は増加する一方で消費支出は減少しており、州・地方政府の税収を直撃するとみられている。

ドイツ銀行プライベート・ウエルスマネジメント(ニューヨーク)の債券担当責任者、ギャリー・ポラック氏は、FRBは地方政府にキャッシュフローの命綱を投じたと指摘。「地方政府の全ての問題は解決しないが、何らかの効果はあり、現状を踏まえると何もないよりましだ」と述べた。

ヌビーンの債券戦略責任者を務めるトニー・ロドリゲス氏は、FRBの緊急措置によって、州・地方政府がキャッシュフロー確保のため資金調達に走り、市場のさらなる混乱を招く事態は回避されるだろうと分析。「大量供給状態にある市場の緊張を幾分か和らげるのに有効だ」とした。

バークレイズは9日付の地方債市場に関する定期リポートで「地方政府は流動性へのニーズに対応し、FRBの買い取り制度を大いに活用する見通しだが、長期的には切迫した問題が残る。州・地方政府の税収は3500億ドル、あるいはそれ以上落ち込むとわれわれは予想しているからだ」とした。