[シドニー 8日 ロイター] - 格付け会社S&Pは8日、オーストラリアの「AAA」格付けの見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。同国が大規模な財政刺激策を打ち出したことを受け、財政状況の「大幅」悪化が見込まれることが理由。

S&Pは、新型コロナウイルス感染拡大による同国経済への影響が現在見込まれる規模や期間を上回った場合、今後2年以内に格下げする可能性があるとした。

オーストラリアは大手格付け3社がいずれもトリプルAに格付けする数少ない国の1つ。

だが、新型コロナ感染拡大によりオーストラリアは経済・財政面で深刻な打撃を受けており、S&Pは豪経済が約30年ぶりにリセッション(景気後退)に陥るとみている。

フライデンバーグ財務相は格付け見通し引き下げについて、「中期的な財政の持続可能性を実現すべく引き続き取り組む重要性をあらためて示すものだ」と述べた。

オーストラリア政府は景気支援に向け、国内総生産(GDP)の16.4%に相当する3200億豪ドル(1977億3000万米ドル)の財政支出を約束している。

一部のファンドマネジャーは見通し引き下げについて、政府の借り入れコストが大幅に上昇する可能性は低いものの、自社の格付けがソブリン格付けの影響を受ける豪企業にとって痛手となる可能性があるとの見方を示した。

S&Pの発表を受けて豪長期国債が売られ、10年債利回り<AU10YT=RR>は前日終盤の0.909%から0.967%に上昇した。

エコノミストは、政府が10月6日に予定する予算案発表より前に格下げが行われる可能性は低いとみている。

S&Pは2018年9月、オーストラリアの財政収支が均衡に近づく中、同国の格付け見通しを「ネガティブ」から「安定的」に引き上げていた。政府は当時、今年度と来年度の財政黒字化を見込んでいた。

S&Pは、これらの予想は全て消えたが、オーストラリアの公的債務は依然として健全との見解を示した。

「財政刺激策はCOVID─19(新型コロナウイルス感染症)の流行がもたらす打撃を緩和するとともに短期的に公的債務を大きく圧迫するものの、財政状況を構造的に悪化させることはない」と指摘。「こうした改善見込みが『AAA』格付けを支援する主要因だ」とした。

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