水野文也

[東京 1日 ロイター] - 株式市場は依然として不安定だが、チャート上では底入れ感が徐々に強まる個別銘柄も出てきている。「巣ごもり消費」やテレワーク関連など、外出の自粛などで今後、需要が高まるとみられている分野だ。業績下方修正や減配などを織り込むのはこれからとの見方もあるが、物色は二極化の様相を呈してきている。

1日の東京株式市場は、後半大きく崩れたものの、朝方から逆行高となり、大引けまで堅調となる銘柄が目立った。

NEC<6701.T>は一時、前日比185円高の4130円まで上昇。1月14日につけた上場来高値5180円から3月17日の年初来安値3180円まで押した幅の半値戻しの水準(4180円)に迫った。同じく逆行高となった任天堂<7974.T>は、新型コロナショック以前の1月末の株価水準まで戻してきた。

このところ、全体が安い場面でも底堅い動きをしているのは、新型コロナウイルスの感染予防や、テレワーク、巣ごもりなどのほか、今回の騒動が終息した後にビジネスチャンスが一気に広がるとみられているIT関連株だ。

あるITベンチャーの上場企業トップは「足元の受注に影響が出る可能性はあるが、クラウド関連など新型コロナの問題が終息すれば、一気にビジネスチャンスが広がり業容拡大が期待できるようになる」と話す。この企業では、株価下落で「お買い得」となった機を捉え、業容拡大のためのM&A(合併・買収)を検討しているという。

3月の下落相場においては、世界的にリスクオフの嵐が吹き荒れ、内容にかかわらず現金化を急ぐ流れで極端な下げ相場となった。しかし、市場では「売るべきところは売った印象がある。先行き不透明感が強い中で、業態や内容で銘柄を選別する動きが出てきたのは、マーケットが冷静さを完全に取り戻した証拠だ」(国内証券)との声が出ている。

一方、「全体的な回復を読むのはまだ早い」と証券ジャパン・調査情報部長の大谷正之氏は指摘する。大谷氏は「新型コロナについて欧米でピーク感が出るまでは厳しい。国内では経済対策が決まった段階で、全体的な流れが出てくる」と話している。

首都封鎖が現実となった場合、製造業や物流業などへの影響は、むしろそこからが本番となる。ひと頃に比べて市場は冷静さは取り戻したものの、現実の悪化を織り込むグループと、影響が小さく将来の回復を読むグループとで、当面は物色の二極化が進むことになりそうだ。

*見出しの脱字を補い再送します。