[パリ/トゥールーズ 30日 ロイター] - 欧州航空機大手エアバス<AIR.PA>は、新型コロナウイルスの世界的流行に起因する労働力および航空機部品の不足に直面しており、一部工場の操業停止が続くなか、航空機生産は当面、通常の10─20%程度までしか回復しない可能性がある。業界や労組の関係筋が明らかにした。

なかでも、ワイドボディー(双通路)機は最も大きな影響を受けている。新型コロナ危機が世界の航空業界に打撃を与えるなか、アジアの長距離国際便市場を中心に、ワイドボディー機への需要が低迷するとみられているからだ。

エアバスは欧州各地に工場を持っており、フランスとスペインの工場は操業を4日間停止後、1週間前に再開していた。しかし、スペイン政府が新型コロナ対策で全土封鎖を強化したのを受け、同社は30日、機体の尾部を生産するスペインの工場を再び4月9日まで停止すると発表した。

同社はまた、英国とドイツでの航空機の翼の生産も3週間停止するとしている。

労組関係者は30日、仏南部トゥールーズにある本社工場で勤務に就く従業員は全体の10─12%にとどまっていると推計。業界関係者は15%近い従業員が勤務していると指摘した。

エアバスは取材に対し、2020年の業績目標を取り下げたとあらためて述べた。

仏政府は、大規模な信用保証や中小企業支援策を通じて、国内経済の戦略的に重要な部門の活動を維持する取り組みを進めているが、業界筋によると、航空機のサプライチェーン(供給網)全体で部品不足が続いているという。

特に状況が悪いのはエアバスや競合する米ボーイングと直接取引がある下請け会社から注文を受ける孫請けあるいはひ孫請け企業だ。

ある幹部は「フランスのサプライチェーンは一時、ほぼ半分が閉鎖した。ただ、状況は改善している」と述べた。

航空機エンジン大手の仏サフラン<SAF.PA>は前週、エアバスへのエンジン供給は継続しており、2─3週間分の部品を確保していると明らかにしていた。ただ、同社の最高経営責任者(CEO)は、サプライチェーンのさらに下流に多少の問題があると述べていた。