iPS細胞から肝臓がん作製 岡山大、予防や治療法発見へ期待
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がんのモデル(をつくるもととなる細胞)を、遺伝子変異や欠損を起こさずに人工的に作り出した点が、興味深い点です。このモデルで作った肝臓がんの細胞に出ている遺伝子を標的やマーカーとして興味がある企業や研究はあるかもしれません。
論文によると、実際の操作的には、ヒトの肝臓がんの細胞株を培養していた上清の液(我々は Conditioned Medium と呼びます)を、マウスの iPS細胞にかけて4週間培養すると、その後、肝臓がんを構成できる細胞の性質を獲得したというデータを出しています。
通常がんはウイルス感染や、大事な遺伝子の異常で引き起こされるのですが、そのプロセスを模倣せずに、その後で起こるであろう癌化イベントを、他の細胞の培養液を混ぜるだけで一部引き起こすことができたというインパクトと思います。
実際に肝細胞がんを作りうるという証明は、免疫力のないマウス(細胞を移植しても拒絶されないようにしている高価なマウス)に先の4週間培養した細胞を、肝臓に注入したのち、28日観察すると、肝臓がんと類似した組織構造や、特徴的な遺伝子発現(GPC3等)が現れて再現できているということです。
この細胞が、実際にどういった肝臓がんのモデルであり、どのように使っていくのかは、すこし周辺のデータが必要と思いますが、他の細胞の培養上清でがんの性質を持つ細胞のもとを作れるやり方を示したという点はとても興味深いです。
論文はオープンアクセスです。
A Novel Model of Liver Cancer Stem Cells Developed from Induced Pluripotent Stem Cells
BJC, Published: 17 March 2020
https://www.nature.com/articles/s41416-020-0792-z