(ブルームバーグ): 富士フイルムホールディングス(HD)株は、18日に前日比15%高のストップ高で取引を終えた。中国当局が同社グループの富士フイルム富山化学が開発したインフルエンザ治療薬「アビガン」の有効成分が、新型コロナウイルスの感染症治療にも有効だと発表したことが背景にある。

富士フHD株は午前の取引で買い注文が売り注文を大幅に上回り、取引開始後の約1時間半後に値幅制限いっぱいの700円高の5238円で売買が成立。その後5000円を割る場面も一時あったが、ストップ高でこの日の取引を終了した。日中上昇率としては2013年の5月以来、約6年10カ月ぶりの大きさとなった。

中国国務院の新型コロナウイルス研究チームは17日、同ウイルスによる感染症の治療計画にできるだけ早くアビガンの有効成分「ファビピラビル」を含めるよう提言していると発表。時事通信は同日、富士フHDと16年にライセンス契約を結んだ中国の製薬大手が後発医薬品を量産する方針だと伝えた。富士フHDの同成分の中国での物質特許が切れたため、ライセンス契約はすでに終了している。

富士フHDの株価は2月25日に日本政府からアビガンの増産要請を受けたとの報道を受けて急騰した後、18年末の水準近くまで下げていた。野村証券の和田木哲哉アナリストは5日付のリポートで「理論上、アビガンは新型コロナウイルスの増殖抑制に効果があるはず」で、「有効性が確認されれば、新型肺炎に対するパニックの沈静化効果が期待」できるとコメントした。

富士フHDの広報担当者は電話取材に、同社はアビガンの企業治験に向けて準備中だと明らかにした。

(株価を更新し、富士フイルムHDのコメントを追加して更新しました)

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