[サンフランシスコ 12日 ロイター] - 12日の米株式市場は約30年ぶりの大幅な下落率を記録した。新型コロナウイルスの感染が「パンデミック(世界的な大流行)」となる中、世界的リセッション(景気後退)への懸念が広がった。投資家たちは、相場が今後どこまで下落するのか見当もつかず、茫然とするばかりだ。

S&P500種指数はこの16営業日で約27%下げ、ポートフォリオは壊滅状態。プロスポーツの試合中止、会議の取りやめ、がらがらのレストランが、不安心理に一段と拍車をかけている。投資家が心配しているのは、過去最長の米景気拡大が終わりつつあるのか、ではなく、今や現実味を帯びるリセッションがどの程度深刻なものになるのかだ。

サンライズ・キャピタル・パートナーズのクリストファー・スタントン最高投資責任者(CIO)は「2008年よりひどい。(対米同時攻撃が起きた)9月11日よりも悪い。私は1993年にこの業界に入ったが、これほどパニック状態の市場は経験したことがない」と話す。「人々はただ、憶測に振り回されて取引している感じだ」という。

ダウ平均株価の10%下落、S&Pの9.5%下落は、ともに1987年以降で最大の下落率だ。1987年10月19日の「ブラックマンデー」には、ダウは22.6%安と、過去最大の下落率を記録した。

米国株式市場はこの10年、何度か調整に見舞われたものの、ほぼ一貫して上昇基調にあった。こうした市場に慣れた投資家にとって、今回の株下落の速度と大きさはショック以外の何物でもなかったようだ。

ダイヤモンド・ヒル・キャピタル・マネジメントの債券ポートフォリオマネジャー、ジョン・マックレイン氏は「乗り遅れることへの懸念が、未知への恐怖に変わった。こんな状況はこれまでに経験したことがない」と語った。

リフィニティブ・データストリームによると、今回の急落の結果、S&P500構成銘柄の予想利益を基にした株価収益率(PER)は16倍を割り込み、2019年初頭以来の低水準となった。ただし、新型コロナの影響で、企業業績は今後、大幅に悪化することが見込まれる。

ビスポーク・インベストメント・グループはリポートで「リセッション入りがほぼ確実となり、S&Pがきょう弱気相場の領域に入る中、問う意味のある質問は、どの程度織り込み済みなのかだ」とする。

こうした不透明感を反映し、投資家の不安心理を示すシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー・インデックス(VIX指数)<.VIX>は12日、1日としては過去最高の上昇を記録した。

インバネス・カウンセルの首席投資ストラテジスト、ティム・グリスキー氏は「問題なのは経済ではなく、新型ウィルスとそれが引き起こしているパニックだ」と話す。「私は、こうしたパニック状態は行き過ぎだと考えているが、人々が恐慌に陥るのを止めることはできない」。

トーレーダらは、米連邦準備理事会(FRB)が新型ウイルスの問題に対応するため、来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)で再び積極的な利下げを行うと予想する。FRBは先週、50ベーシスポイント(bp)の緊急利下げを行ったが、市場の鎮静化には成功しなかった。

ダイヤモンド・ヒル・キャピタル・マネジメントのマックレイン氏は「財政政策と金融政策の協調が必要。人々はプランがあることを知る必要がある」と指摘した。