和田崇彦

[東京 13日 ロイター] - 滋賀銀行<8366.T>の高橋祥二郎頭取は、ロイターのインタビューに応じ、新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けている貸出先の支援を徹底する方針を示した。融資先の業績悪化は不可避で、与信コストが一定程度増える見通しのため、内部留保の積み増しが必要だとの認識を示し、「地銀の出番だという気概で取り組む」と述べた。

本店が琵琶湖のほとりに位置する滋賀銀は、取引先企業を環境保護への取り組みの違いで格付けし、貸出金利に差を設ける「環境金融」を推進している。2月には、国連環境計画・金融イニシアティブが提唱した「責任銀行原則」に地方銀行で初めて署名した。

高橋頭取は12日に実施したインタビューで、「儲けだけで企業が認められる時代ではなくなった」と述べ、企業は短期的な収益や経済効率性の追求だけでなく、環境への配慮や労働環境の整備などに取り組むべきだと語った。

<新型コロナで苦しむ中小企業に「地銀の出番」>

滋賀銀は滋賀県、京都府、大阪府を主な営業基盤とする。高橋頭取によると、新型コロナウイルスの感染拡大で特に団体の宿泊や大口の宴会が激減しているという。その上で「こういう時こそ、顧客と正面から向き合いながら、こちらから面談するなり電話するなり、地銀の出番だという気概で対応する」と述べた。

滋賀銀の収益への影響については「多くの企業の収益が落ち込むのはどうもがいても避けられない。一般貸倒引当で一定の与信コストが膨らむのは当たり前だ」と指摘。いざという時の融資余力を確保する観点から、普段から内部留保を高めていく施策が必要だと述べた。滋賀銀単体の一般貸倒引当金は19年9月末時点で106億3800万円。

高橋頭取は、日銀のマイナス金利政策の長期継続により、収益環境は「厳しい」と話した。今後、仮に景気の下支えに向けてマイナス金利深掘りが決まれば「対応していかざるを得ない」ものの「(マイナス金利深掘りの)効果は不透明になっているのではないか」と指摘した。

<環境金融>

滋賀銀は「環境格付」として、環境に配慮した製品・商品の販売、省エネ・省資源の取り組みなど15の評価項目を独自に設定。取引先を格付けし、格付けに応じて金利を引き下げることで、環境保全活動を促す取り組みをしている。2月末時点で、格付けに賛同した企業は1万1312先(全取引先の60.5%)、格付け取得企業は1万0928先(同58.5%)に上る。

環境に配慮した企業への融資を推進してきた背景として、高橋頭取は、琵琶湖が身近にあることで環境意識が高いことや、「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)を旨とする「近江商人」の精神があると説明した。

中小企業が環境に配慮した取り組みを行うには短期的にコストがかさむが、高橋頭取は長期的な視点で取り組むことが重要だと強調。「日本では、経済合理性からすると割に合わないとの視点もあるが、世界の潮流から言うと、長い目で見ればそういう取り組みをする、しないで一定の評価をされる時代になった」と語った。日本の自動車業界が排ガス規制対応などで技術力を高めてきたことを引き合いに「(高い技術を目指した)厳しい取り組みは、長い目で見れば世界の需要に対応するような取り組みになる」とした。

高橋頭取は「SDGs(持続可能な開発目標)格付け」の開発を目指していることを明らかにした。

一方、ESG(環境、社会、ガバナンス)をテーマにした金融商品の購入はあまり増やさず、銀行としてESG融資に注力する考えを示した。

(編集:石田仁志)