[東京 9日 ロイター] - 9日の取引で、原油先物価格が約30%急落。米WTIは過去最大の下落率を記録する可能性がある。サウジアラビアが原油の公式販売価格(OSP)を引き下げ、大幅増産の計画を打ち出したことを受けて、値下げ競争が始まるとの見方が浮上している。

北海ブレント先物<LCOc1>は0433GMT(日本時間午後1時33分)時点で29%安の1バレル=31.98ドル。同水準にとどまれば、1日の下落率としては湾岸戦争が始まった1991年1月17日以来最大となる。一時は31.02ドルまで下げ、2016年2月12日以来の安値を記録した。

米WTI<CLc1>は32%安の27.99ドル。一時は27.34ドルまで下げ、16年2月22日以来の安値を付けた。下落率が1991年1月に記録した33%を超えて終了すれば、過去最大を更新する。

石油輸出国機構(OPEC)加盟国・非加盟国による連合体「OPECプラス」が6日に開いた閣僚会議では、OPECによる追加減産と減産延長に関する提案をロシアが拒否した。

関係筋が8日にロイターに明らかにしたところによると、サウジはOPECプラスによる現行の減産合意が期限切れとなる3月末以降、生産量を日量1000万バレルを大幅に上回る水準に引き上げる計画。

サウジはまた、すべての輸出先を対象に、全グレードの4月のOSPを1バレル6─8ドル程度引き下げた。

豪プロビス証券の最高投資責任者(CIO)、ジョナサン・バラット氏は「あらゆる予想が外れたようだ」と指摘。受注を確保するために値引きする「底辺への競争」の様相だとした。

サウジやロシアなどの主要産油国が米国のシェールオイルを警戒し、激しいシェア争いを最後に繰り広げたのは2014─16年だった。

INGエコノミクスは調査ノートで「価格競争に突入したのは明白だ。サウジは週末に素早く対応し、4月のOSPを大幅に引き下げた」とした。

ユーラシアグループは調査ノートで「サウジとロシアは、限定的で戦術的な価格戦争に突入しつつある。最も可能性が高いのは、このプロセスが数週間あるいは数か月続くこと。OPECプラスが生産抑制再開で妥協する水準まで価格が下落するまで続く可能性がある」と指摘した。

一方、中国は新型コロナウイルス対策が景気の阻害要因となり、原油輸入の落ち込みにつながっている。イタリアや韓国での感染拡大や米国での感染者の増加を受け、今年の原油需要が低迷するとの懸念が強まっている。

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