[ウィーン 5日 ロイター] - 石油輸出国機構(OPEC)は5日にウィーンで開いた閣僚会合で、日量150万バレルの追加減産を実施する案で合意した。ロシアなど非加盟国の参加を条件としており、新型コロナウイルス感染拡大で下落している価格の下支えに向け、一段の協調を迫る姿勢を打ち出した。

加盟国の閣僚らは公式会合後、非加盟国には追加減産分のうち日量50万バレルの減産を要請する考えを表明。

150万バレルの追加減産案は、市場で予想されていた100万バレルよりも大幅だった。また、追加分を含む減産の期限は当初6月末までとしたが、その後に開いた非公式会合後に発表した声明で2020年末までとすることを提案した。

OPEC加盟国・非加盟国による連合体「OPECプラス」は6日に閣僚会議を開き、最終的な決定を下すが、OPECプラスに参加するロシアとカザフスタンは追加減産について合意していないと表明。合意がまとまらなければ、2016年以来続いているOPECプラスの協調減産体制が崩壊する危険性も秘めている。

OPECプラスの現行の減産枠は日量210万バレルで、既に2008年の金融危機以降で最大となっている。

OPECは公式閣僚会合後に発表した声明で、新型ウイルス流行が「異例の状況」を生み出し、リスクは「下方」に傾いており、行動が求められていると指摘した。

原油価格は年初から約20%下落。OPEC最大の産油国であるサウジは価格押し上げに向けて大幅な減産を求めてきたが、ロシアの合意を取り付けるのに苦戦していた。

ロシアのシルアノフ財務相は、合意がまとまらずに原油価格が下落する状況にも備えていると表明。カザフスタンのノガエフ・エネルギー相は、現在進められている交渉は、現行減産枠の6月までの延期のみが争点になっていると述べた。

<協調体制巡り不透明感>

2人のOPEC筋によると、ロシアが追加減産案に合意しない場合、サウジが協調減産自体を白紙に戻すと主張する可能性がある。

アラブ首長国連邦(UAE)のマズルーイ・エネルギー相は、OPECは単独では減産を行わず、非加盟国の参加が必須になると指摘。「われわれは協調している。このため、OPECが単独で決定することはない」と述べた。

サウジは現行の減産合意の下で約10%の減産を行っており、国別の目標値を大幅に上回っている。ロシアは産油量でサウジを上回るが、減産率はサウジに比べて著しく低い。

ブラック・ゴールド・インベスターズの創業者、ギャリー・ロス氏は、サウジが減産を完全にやめ、産油量を通常の水準に戻すという最悪のシナリオの下では、原油価格は1バレル=25─30ドルに下落すると予想。そうなれば、現在の1バレル=50ドル近辺の価格で既に困難に直面しているOPEC加盟国だけでなく、40ドル近辺でも財政均衡を保てるとしているロシアも打撃は免れない。

ロス氏は「新型ウイルスの感染拡大に起因する需要減を踏まえると、OPECプラスは大幅な減産をせざるを得ない」とし、ロシアも自国の経済的な利益のために参加するとの見方を示した。

北海ブレント原油先物<LCOc1>はOPECによる150万バレルの追加減産案のニュースで一時、0.6%上昇したが、ロシアなどが合意してないと表明したことから、上昇分をほぼ帳消しにした。

OPECプラスが日量150万バレルの追加減産で合意した場合、合計の減産幅は日量360万バレルと、世界的な供給量の約3.6%に相当する。OPECが08年の世界的な金融危機に対応して実施した減産の規模は日量420万バレルだった。

OPECは次回の閣僚会議を6月9日に開く。

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