[ワシントン 4日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は4日に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)で、過去数週間の米経済は控えめから緩やかなペースで拡大したが、新型コロナウイルスの感染拡大が米景気の重しになり始めている兆しがあるとした。

FRBは3日、新型ウイルスの感染拡大による米経済への影響を和らげるため、50ベーシスポイント(bp)の緊急利下げを決定した。必要であれば一段と緩和する姿勢を示した。緊急利下げは金融危機時の2008年以来。新型ウイルスの感染拡大に関する不安が高まっていることを強調する形となった。

ベージュブックは全米各地の企業の調査をまとめた報告書。今回の調査期間は2月の大半を含んだ。調査期間中、新型ウイルスの感染は中国から40カ国超へ拡大し、世界経済が減速するとの不安から株価が急落した。

ベージュブックによると「新型ウイルスによって旅行と観光業にマイナスの影響が及んだ。供給網の一部に遅れが出たとの報告もあった。いくつかの地区では製造業者が向こう数週間で供給網が一段と混乱するとの不安を示した」。FRBはベージュブックで新型ウイルスに48回言及した。

FRBは調査を基に実体経済を把握し、向こう数カ月の経済の見通しを立てる。景況感の変化は多くの場合、経済指標に先立って現れるためだ。

ほとんどの地区が短期的には経済が緩慢なペースで伸びるとの見方を示した。新型ウイルスと今年の米大統領選挙をリスク要因として挙げた。

パウエルFRB議長は前日に急きょ開いた記者会見で、新型ウイルスの米経済への影響は「非常に初期の段階だが、旅行や宿泊業などからは不安の声が上がっている」と述べ、利下げすることで素早く対応する必要があると感じた一因だと説明した。

世界各国で企業が移動制限を導入したり社員を自国へ戻したり、会議を中止している中で、米国では航空と観光産業が打撃を受けている。米アップル<AAPL.O>は先月、今四半期の売上目標を達成できない見通しだと警告した。中国の製造工場が稼働停止となる中でiPhoneの部品調達が制限されていると説明した。今週発表された中国の製造業景況感は記録的な落ち込みとなった。

ベージュブックで新型ウイルスの影響に関する報告はまちまちの内容だった。感染拡大が長引くほど経済への影響が大きくなることを示す。ニューヨーク地区は「ニューヨーク市のホテルは良い経営状態が続いているとしたものの、少数の調査先は新型ウイルスによって観光客が減っていると指摘した」と報告。

一方ダラス地区は「いくつかの調査先が」新型ウイルスによってハイテクと化学メーカーを中心に供給網に影響が出ていると報告した。アトランタ地区では輸送企業が、中国への航空便が中止されたことで空輸貨物量が大幅に減り、第1・四半期売上高に影響すると指摘した。

全体としては、新型ウイルスは今のところ、米経済指標に大きな影響を与えていない。個人消費は伸びており、失業率は50年近くぶりの低水準を維持している。ベージュブックによると、個人消費は加速しているほか、労働市場のひっ迫を理由に雇用の伸びが抑えられており、経済指標の底堅さがなくなる兆しはあまりない。

朝方発表された2月の非製造業総合指数(NMI)は1年ぶりの高水準だった。

*内容を追加しました。