[北京/ソウル 24日 ロイター] - 中国本土外にも感染が広がる新型コロナウイルスは24日、イタリアや韓国、イランなど複数の国で感染者が急増した。世界的な感染拡大を巡る懸念から、世界の株式市場は軒並み急落した。しかし、世界保健機関(WHO)は「パンデミック(世界的な大流行)」と宣言するのは時期尚早との認識を示した。

イタリア保健当局は、新型ウイルス感染で新たに4人が死亡したと発表。同国での死者はこれで7人になった。死亡した患者はいずれも高齢もしくは重い病気を患っていたという。また、国内の感染者数も220人を超えた。

イタリアのコンテ首相は、新型ウイルス流行による「経済への影響が極めて大きく」となる可能性があると指摘。ただ、影響を見極める段階には至っていないと述べた。

中東地域ではイランを中心に感染が広がっている。イランはこれまでに61人の感染を確認。感染による死者は12人。

クウェート、バーレーン、オマーン、イラク、アフガニスタンではこの日、初の感染が確認された。いずれもイランへの渡航歴がある。

WHOは25日に、イランに調査団を派遣する。

韓国の保健当局は、新たに231人の感染を確認したと発表。これにより、韓国国内の感染者は累計833人に達した。感染は第4の都市・大邱の教会信者らの間で広がっている。

米疾病対策センター(CDC)によると、米国内の新型ウイルス感染確認数は14人。これとは別に、中国・武漢市から帰国した人やクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の退避者で感染が確認されたのは39人に上る。

中国本土以外で患者が急増する中、金融市場では安全資産への逃避買いが膨らみ、世界株安となった。

米株式市場は主要株価3指数がそろって3%を超える下げを記録。ダウ平均は一時約1000ドル下げる場面もあった。

欧州株式市場は2016年半ば以来の大幅安となり、欧州域内で最悪の感染拡大となっているイタリアの主要株価指数は5.4%急落した。

原油相場も約5%下落。一方、安全資産とされる金は7年ぶり高値を更新した。

また、米金利先物が急上昇し、昨秋以来の高水準を付けた。米連邦準備理事会(FRB)が新型ウイルス流行による経済への影響を和らげるために利下げに動くとの観測が高まっていることを反映した。

CMEのフェドウォッチによると、85%超の確率でFRBが7月に少なくとも0.25%ポイント利下げするとの見方が織り込まれた。1カ月前の時点では50%だった。また、来年初旬時点の金利が1%近辺もしくは1%以下と、現在の1.50─1.75%から低下するとの予想も織り込まれた。

WHOのテドロス事務局長は「パンデミックという言葉は事実にそぐわない」とし、「パンデミックの可能性に備えながら、パンデミック阻止に注力すべきだ」と語った。イタリアやイラン、韓国での感染例急増については「深刻な懸念」と表明。同時に、世界的に制御不可能な状態に陥ってはおらず、多くの死者も出てないと指摘した。

国連のグテレス事務総長は新型ウイルスの封じ込めはなお可能としつつも、「必要とされる措置を全て講じなければ、制御不可能となり、世界の公衆衛生や経済に多大な影響をもたらす可能性がある」と警鐘を鳴らした。

米ホワイトハウス報道官や政権筋によると、トランプ政権は新型ウイルス対策強化に向け、議会に緊急の財政措置を求めることを検討している。米紙ワシントン・ポストなどによると、トランプ政権は10億ドルを議会に要請する可能性があると報じた。

一方、中国では23日時点の新規感染者が409人となり、前日の648人から増加ペースが鈍化。これまでに本土で確認された感染者は累計7万7150人、死者は2592人。

しかし、中国保健当局によると、これまでに3000人超の医療従事者が新型ウイルスに感染。大半が新型ウイルスの発生源とされる湖北省で働くスタッフだという。