[ブリュッセル 20日 ロイター] - 欧州連合(EU)は20日にブリュッセルで開幕した首脳会議で、2021─27年のEU予算を巡る協議を開始した。英国の離脱で予算規模が750億ユーロ(810億ドル)減少すると見込まれる中、気候変動や移民などの問題への対応も迫られており、2日間の日程で開かれる今回の首脳会議開始前から加盟国の間で見解の相違が顕著となっていた。

首脳会議に先立ちミシェルEU大統領は、21─27年の予算を域内国民総所得(GNI)の1.074%に当たる約1兆0900億ユーロとすることを14日に提案。これが首脳会議での討議のたたき台となっている。[nL4N2AE3YM]

ただ、オランダ、オーストリア、スウェーデン、デンマークは同比率を1.00%にとどめるよう主張。EU予算に最も大きく貢献しているドイツはこれより高い水準を容認する姿勢を示しているが、1.07%は高過ぎるとしている。

このほか、EUの執行機関である欧州委員会は1.1%、欧州議会は1.3%と意見の相違は幅広い。

長期的な予算を巡る意見の隔たりは、EU加盟国間に存在する南北、東西、あるいは経済規模による亀裂を露呈している。

外交筋は、2日間の首脳会議で意見の隔たりが埋まる可能性は低いとの見解を示した。

1日目には出席した首脳が1人ずつこれまでに示した立場を改めて主張し、その後、議長役のミシェル大統領が夜にかけて各国首脳と個別に会談し、新たなたたき台を模索した。

ドイツのメルケル首相は会議開始にあたり記者団に対し「有意な進展が得られることを望む。複雑な問題だ。克服しなくてはならない見解の大きな相違が存在している」と述べた。

フランスのマクロン大統領は「英国の離脱による影響を他国の削減努力で補完することは容認できない」とし、「野心的な合意に至るには時間がかかる。数日かかる可能性もある」と語った。

英国の離脱による予算不足を埋めるため、欧州委員会は、特定の加盟国の拠出金を減免する「リベート」と呼ばれる慣行の廃止を提案している。しかし、リベートの恩恵を享受している国は、廃止は受けられないとの立場だ。

EUは新たな財源も模索しているが、プラスチックごみへの課税や温暖化ガスの排出権取引から得られる利益の活用などについても首脳らの意見は対立している。

当局者らは、年末までに合意が得られなければ、2021年以降のEUのプロジェクトの大部分が凍結される恐れがあると指摘している。

*内容を追加しました。